2022-01-01から1年間の記事一覧

極私的2022ベスト

難儀なことばかりの一年でしたね。 ■映画『エルヴィス』 augtodec.hatenablog.com 物語に大きな起伏があって画面が華やかで主人公が格好良くて、決めの場面が全てキマっていて素敵要素だけでできている映画。大きな画面と迫力のある音響で、映画館で観て本当…

グリーンナイト

2022年、米国、デヴィッド・ロウリー監督作 アーサー王の甥であるガウェインは、王の宮殿で開かれたクリスマスの宴に赴く。そこへやってきた不思議な緑の騎士が、自分に一撃を与えよ、ただし1年後には自分を探し出して同じ一撃を受けよ、というゲームを…

武蔵野/斎藤潤一郎

絶望した漫画家は都会でも田舎でもない黄昏の境界へ……『死都調布』作者が漂着した前人未到の旅漫画。 武蔵野 (torch comics) 作者:斎藤 潤一郎 リイド社 Amazon なんと言えばいいのだろうか。著者と思われる人物が関東近郊を訪れ歩き回る。目的もなくただ歩…

民宿雪国/樋口毅宏 著

新潟県のさほど観光地でもない場所に民宿雪国があった。その主人は数奇な運命を辿った男で、その人生が少しずつ解き明かされる。 民宿雪国 (祥伝社文庫) 作者:樋口 毅宏 祥伝社 Amazon 『中野正彦の昭和九十二年』という著者の新刊が回収となったらしい。 ht…

MAD GOD

2022年、米国、フィル・ティペット監督作 マスクをつけた人物は、カプセルで吊られ地下へと降下し世界を旅する。地図を持っているから何らかの目的地とそこで果たすべき行動はあるはずだが、その目的が不明のまま観客は地獄を共に旅することになる。様々…

残念こそ俺のごちそう。そして、 ベストコラム集/バッキー井上

Meets Regionalで長く酒場についてのコラムを連載する著者のベスト盤 残念こそ俺のご馳走。――そして、ベストコラム集 作者:バッキー井上 ミシマ社 Amazon バッキー井上さんという人は酒場について書く人だ。酒や肴のウンチクを語る人ではない。どこそこの酒…

夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦 著

大学の後輩である黒髪の乙女に恋する先輩男子は、奇遇に次ぐ奇遇によって彼女と鉢合わせすることで外堀を埋めようとしていたが、そのことによって春夏秋冬おかしな事案に巻き込まれる。 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫) 作者:森見 登美彦 KADOKAWA Amazon 少…

勝手にふるえてろ/綿矢りさ 著

中学生の時の同級生の男子に、未だに恋焦がれている26歳の女子が、会社の同僚の男性にせまられたりしつつ暮らす話。短編『仲良くしようか』を併録。 勝手にふるえてろ (文春文庫) 作者:綿矢 りさ 文藝春秋 Amazon 映画や物語を観たり読んだりして「感情移…

火星の人/アンディ・ウィアー 著

有人火星探査によって火星に降り立った宇宙飛行士たちは、強い砂嵐の為に撤退を余儀なくされる。彼らは帰還船に乗り込もうとしたが、その際に乗組員の一人、ワトニーに飛んできたアンテナが突き刺さり彼は強風で吹き飛ばされてしまう。彼が死んだと判断した…

三島由紀夫レター教室/三島由紀夫 著

5人の登場人物たちが手紙をやり取りする形で物語が紡がれていく小説。 三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫) 作者:三島 由紀夫 筑摩書房 Amazon 今どきの人たちは、手紙を書くことがあるだろうか。eメールがあるしLINEもあるから手紙で済ませる用事はスマート…

フェミニズムってなんですか?/清水晶子 著

フェミニズムの概要について解説してくれる書。 フェミニズムってなんですか? (文春新書) 作者:清水 晶子 文藝春秋 Amazon 以前、フェミニズムの歴史と概要が知りたくて『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』という本を読んだが、思…

67歳の新人 ハン角斉短編集/ハン角斉

衝撃作『山で暮らす男』で新人賞を受賞し、業界を騒然とさせた67歳の新人・ハン角斉。漲る初期衝動と独自の世界観でプロも称賛する氏の読切6編を収めた奇跡の初単行本! 67歳の新人 ハン角斉短編集 (ビッグコミックス) 作者:ハン角斉 小学館 Amazon どうや…

Walk Home/INCAPACITANTS

インキャパシタンツの2012年作7inレコード。 ジャケットに一切クレジットの表記はなく、盤面のラベルも真っ黒で何も情報はない。インナーが一枚入っていてHemitagetapesというレーベルからリリースされたレコードであることが分かる。 Hemitagetapesの…

ある男

2022年、日本、石川慶監督作 地方の町で林業に従事していた男が事故で亡くなる。亡くなった夫の一周忌にやってきた実兄は遺影を見て、「この男は弟ではない」と妻に告げる。妻は弁護士に、夫だった男が何者だったのか確かめて欲しいと依頼する。平野啓一…

裏面 ある幻想的な物語/アルフレート・クビーン 著

ドイツに住む画家は、見知らぬ男の訪問を受ける。彼が言うには、画家の同級生は富豪となり中央アジアに夢の国を建設している、そしてその国にあなたを招待したい、とのことだった。画家はその申し出を受けて妻と夢の国に移住するが、その国の崩壊を目撃する…

悪魔が憐れむ歌 暗黒映画入門/高橋ヨシキ 著

映画監督としても活躍する高橋ヨシキ氏の映画評論集。 悪魔が憐れむ歌 ――暗黒映画入門 (ちくま文庫) 作者:高橋 ヨシキ 筑摩書房 Amazon 映画本は星の数ほどあれど、好きな映画本をひとつ選べと言われればこれになるのです。 『悪趣味洋画劇場』1994年、…

スタッフロール/深緑野分 著

80年代にSF映画や怪獣映画で特殊造形師として働いていたマチルダは、突如姿を消してしまうが、彼女が最後に作ったモンスターはカルト映画としていつまでも人気があった。 2010年代に同作品がリメイクされることになり、CGクリエイターのヴィヴィアンは…

ある男/平野啓一郎 著

子を亡くし離婚を経験した女は郷里に帰り暮らしていたが、ある男と知り合い結婚して家族となる。しかし幸せな生活もつかの間、男は仕事の事故で死んでしまう。男の過去の話から親族に連絡すると実兄がやってくるが、遺影を見るなり弟ではないと言う。では誰…

ファスト教養/レジー 著

昨今の世の中で隆盛するファスト教養を解読する本。 ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち (集英社新書) 作者:レジー 集英社 Amazon 雨宮純の『あなたを陰謀論者にする言葉』は、自己啓発やマルチ商法がオカルトやスピリチュアルと同じ泉から湧き出してい…

自民党の統一教会汚染 追跡3000日/鈴木エイト 著

安倍晋三銃撃事件の後に明らかになっていった統一教会と政治家の蜜月を、それよりずっと前から追跡し報道していた著者による本。 自民党の統一教会汚染 追跡3000日 作者:鈴木エイト 小学館 Amazon 連日ニュースなどで統一教会と政治家の関係があらわにな…

妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ/橋迫瑞穂 著

妊娠と出産を控えた女性たちの周囲に広がるスピリチュアリティを社会学者が考察する本。 妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ (集英社新書) 作者:橋迫瑞穂 集英社 Amazon つい先日『あなたを陰謀論者にする言葉』という本を読んだ。陰謀論、オカルトなどの…

反=恋愛映画論/佐々木敦、児玉美月 著

古今東西の恋愛映画について語る内容。 反=恋愛映画論──『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで (ele-king books) 作者:児玉 美月,佐々木 敦 Pヴァイン Amazon 恋愛映画だけに特化して著者の二人が対談し、その考えを掘り下げていく。私はこう思った…

あなたを陰謀論者にする言葉/雨宮純 著

古今東西のオカルト、陰謀論を網羅し解説する書。 あなたを陰謀論者にする言葉 Forest2545新書 作者:雨宮純 フォレスト出版 Amazon 様々な胡散臭げなものたちが取り上げられる。 60年代に始まったカウンターカルチャー、ヒッピームーブメントから、ドラッグ…

テロリズムとは何か/小林良樹 著

元警察官僚の著者によるテロリズムの研究と解説の書。 テロリズムとは何か――〈恐怖〉を読み解くリテラシー 作者:小林 良樹 慶應義塾大学出版会 Amazon 画像は自分の本棚から。 黄色い本『WAVE14 テロ 完全イエローブック』は1987年刊行の本で、当時のテロリ…

激怒

2022年、日本、高橋ヨシキ監督作 行き過ぎた捜査が問題となった刑事は、療養施設に送られる。そこから帰ってくると、町と警察は変貌しており、市民による暴力が治安を維持する力になっていた。 www.youtube.com 暴力をも持さない、という現代の常識で言…

HEROES

兵庫県立美術館で開催された武者絵、浮世絵と刀剣の展覧会。 平家物語、太平記、里見八犬伝にヤマタノオロチ退治のような日本神話、それらに登場する英雄が戦う姿を描いた、武者絵と呼ばれる浮世絵と刀剣の展覧会です。武者絵は江戸時代のものが多かった。 …

ブレット・トレイン

2022年、米国、デビッド・リーチ監督作 東京から乗った新幹線でブリーフケースを盗み出す仕事を請け負った男は、あっという間に目的を達成した。しかし、次から次へと殺し屋が現れ列車を降りることもできない。そのまま新幹線は京都に向かってひた走る。 www…

NOPE

2022年、米国、ジョーダン・ピール監督作 空に何かいる。ホラー映画。 www.youtube.com 空に何か恐ろしいものがいるのです。そいつによって恐ろしいことが起こるのです。それ以上は言えないのです。ネタバレになってしまうから。 ホラー映画として面白く拝見…

ファンタズム

1979年、米国、ドン・コスカレリ監督作 近くの霊園では不可思議なことが度々起こっていた。兄弟と友人は、その謎を解き明かそうとする。 www.youtube.com 子供の頃に深夜のテレビで観て震え上がったホラー映画。もう一度観たいとうっすら思っていたが、何気…

あと一歩、そばに来て/武田登竜門 

短編集。 あと一歩、そばに来て (ビームコミックス) 作者:武田 登竜門 KADOKAWA Amazon 本屋でみかけてなんとなく「面白そうだ」と思い購入して読んで見た。収録作品の『大好きな妻だった』はWebでも公開されていて読める。はてなブックマークでも話題になっ…