南米の何処かの国に君臨する独裁者のお話
多分、南米。そのどこかの大統領という名の独裁者のお話。とても退廃的で独裁者のきらびやかな生活は描かれず、大統領の官邸も荒れ放題ですさんでいる。その様子が描かれていて、独裁者自身もこの生活に満足しているとは言い難い。
以前見た映画、アレクセイ・ゲルマン監督作の『神々のたそがれ』を思い出した。『神々のたそがれ』はSFで異星に君臨する男はいるが、その惑星の文化は中世程度であって、その暮らしは清潔さに欠け野蛮が横行している。
『族長の秋』は南米のどこだかも明示されず、時代もはっきりとは書かれていない、しかし周辺諸国に威嚇されていることは書かれていた。それでもそのような外構の手練手管の話よりも独裁者の孤独と惨めさが書かれたもので、文章の一つ一つが味わい深いものだった。こういう表現もあるのか、という感じ。
以前読んだ同じ著者の『百年の孤独』の解説を筒井康隆が書いていたのだが、『百年の孤独』より『族長の秋』の方が面白いと書いていた。(文庫の解説でそんなこと書くかね、とは思ったけれど)なので読んで見たのだけれど、まあどっちも面白かったかな。日本文学ではあり得ない小説だとは思う。

