族長の秋/ガブリル・ガルシア=マルケス

南米の何処かの国に君臨する独裁者のお話

多分、南米。そのどこかの大統領という名の独裁者のお話。とても退廃的で独裁者のきらびやかな生活は描かれず、大統領の官邸も荒れ放題ですさんでいる。その様子が描かれていて、独裁者自身もこの生活に満足しているとは言い難い。

以前見た映画、アレクセイ・ゲルマン監督作の『神々のたそがれ』を思い出した。『神々のたそがれ』はSFで異星に君臨する男はいるが、その惑星の文化は中世程度であって、その暮らしは清潔さに欠け野蛮が横行している。
『族長の秋』は南米のどこだかも明示されず、時代もはっきりとは書かれていない、しかし周辺諸国に威嚇されていることは書かれていた。それでもそのような外構の手練手管の話よりも独裁者の孤独と惨めさが書かれたもので、文章の一つ一つが味わい深いものだった。こういう表現もあるのか、という感じ。
以前読んだ同じ著者の『百年の孤独』の解説を筒井康隆が書いていたのだが、『百年の孤独』より『族長の秋』の方が面白いと書いていた。(文庫の解説でそんなこと書くかね、とは思ったけれど)なので読んで見たのだけれど、まあどっちも面白かったかな。日本文学ではあり得ない小説だとは思う。

ストリート・オブ・ファイヤー

1984年、米国、ウォルター・ヒル監督作

https://www.youtube.com/watch?v=JIrcFjFD3VY

現在、YouTubeの映画とテレビ番組というチャンネルで無料公開中です。見ないと損だと思う。
ウォルター・ヒルの最高傑作だと思うくらい何度も見たし、今見てもやっぱり面白い。
物語は、ある街の地元出身の歌姫が居り、彼女のコンサートに暴走族が乱入して彼女を拉致してしまう。そこで彼女の元カノだった男を呼び寄せ彼女を助け出してもらうというお話。
ストーリーには何も難しいところはない。しかしウォルター・ヒルの『ウォリアーズ』が、街のある場所から地元に帰ろうとするというお話にも酷似している。そして音楽映画かと思わせるくらい、歌姫のコンサートの場面が魅力的で曲も凄く良いのである。歌姫を演じたのは、当時まだ十代だったダイアン・レインでとても美しい。
そしてダイアン・レインを救出に向かうのは元カレであるマイケル・パレと酒場で拾った元兵士のエイミー・マディガン。この二人の掛け合いも楽しい。

騙されたと思って観て欲しい。娯楽映画というのはこういうものなのだと思わせる映画だと思う。エンディングの場面も秀逸。

百年の孤独/ガブリエル・ガルシア=マルケス 著

南米の何処か、マコンドという町を切り開くためにやってきた一家の盛衰を描いた物語。

ずっと夢を見ているような夢の話を聞かされていているようなそんな現実感があった。小説だから現実のことではないのだろうけれど、マコンドという町の歴史師を仔細に読んだような気持ちにもなった。こういう手法はマジックリアリズムと呼ばれるらしいのだが、南米という訪れることもない地域では本当にこんなことが起こったかのようにも思えた。家族の中、そしてそこにまつわる人々の愛憎が描かれて、それも日本的ではなく、こういうのが南米的なのだろうかと言う風に読んだ。長い長い夢を見ているような小説だったが、あらゆることが矢継ぎ早に起こり飽きることはなかった。これが世界文学だと言われれば「へーそうなんですか」と答えると思うが、面白かったのは間違いない。
解説の筒井康隆によると『族長の秋』こそが面白いのだそうである。筒井康隆が勧めるのだからよっぽどなのだろう。いつかは読んでみないといけない(かもしれない)

プロジェクト・ヘイル・メアリー

死にかけている太陽を救うために遠くの星まで出かけていくお話。

www.youtube.com

 

現先既読。この物語をどういうふうに映画に落とし込んでいくのかという興味があった。正直、楽しみにしていた。
しかし、値落ちししてしまって。一度ならず数回寝落ちしてしまって。映画を見たとは言えない状態。疲れてたのかな。睡眠不足だったのかな。思い当たる節は数々あれど、言い訳を語ったって無意味だし。まさに残念な映画鑑賞だった。
グレースが「ロッキーの船の中を見たい」と言ったくだりは原作になかったのではないかな。それくらいしか語ることができない。もう一回見に行くかな。思案中。

お茶漬の味

1952年、日本、小津安二郎監督作

裕福な家庭での夫婦関係がうまくいかなかったり、そうでなかったり。
アマプラで鑑賞。

www.youtube.com

 

昨日観た『祇園囃子』は1953年作だった。同じ木暮実千代が出演しているけれど、随分年齢が違うように見える。はっきりいうと、この映画での方がずっと歳上に見える。
裕福な家庭での夫婦関係が主軸だけれど、その周りに若い女のお見合いや、仲の良い女だけで(嘘をついて)出かける温泉旅行の話などが散りばめらている。
裕福な家庭らしく、家の作りが複相的で、そういうものが映画的である。木暮実千代は成瀬巳喜男の『祇園囃子』より意固地な主婦を演じていて、同じ年代に撮影されてこんなに違うキャラクターを演じられるということにも驚かされる。
基本的に家庭劇で、大きな事件や事故は起こらない。そういう静かな生活の中の小さなさざなみみたいなものを観ているのが心地良い。
笠智衆がパチンコ屋の店主として出てきて、老人役でない彼を観てほっこりもした。