自民党の統一教会汚染 追跡3000日/鈴木エイト 著

安倍晋三銃撃事件の後に明らかになっていった統一教会と政治家の蜜月を、それよりずっと前から追跡し報道していた著者による本。

 

連日ニュースなどで統一教会と政治家の関係があらわになってきている。そして、そこには鈴木エイトさんがいて、的確なことを仰っている。統一教会問題で今最も信頼されている記者と言っていいと思う。

鈴木エイトさんのお名前を初めて認識したのはこれ

徹底検証 日本の右傾化/塚田穂高 編著 - 8月~12月

この中で「統一教会勝共連合ーその右派運動の歴史と現在」と題された文章を読んでのことだった。右翼の中には生長の家という宗教に影響を受けている人たちがいることは知っていて、菅野完の『日本会議の研究』でもそのことに触れられていた。その時は「統一教会も右派系宗教なのか」くらいの感想だったので、これほど政治家と癒着しているとは思わなかった。

ニュースで最新の報道を見て知るのも良いが、活字できっちりとした事実が積み重ねられていくのは衝撃というか重みが違う。長年、たいして話題にもならずお金にもならなかっただろうに根気強く調査を続けてきた著者の執念の賜物だと思う。選挙期間中に疑惑の政治家に直撃取材を試みて、選挙妨害だと警察を呼ばれたりしていて、警察の対応も政治家におもねった態度であったりしたのにめげずにいたことは強さを感じる。

本書で書かれているように

2018年6月、全国弁連全国霊感商法対策弁護士連絡会)は参議院議員会館で緊急院内集会を開き、統一教会からの支援を受けないように衆参両院の全国会議員に要請する声明文を採択、各議員会館内の全議員事務所に配布した。

ことが記されている。それなのに未だに「知りませんでした」は通用しないのではないだろうか。嘘を吐いているとしか思えない。

ただ、疑惑の政治家たちにも少し同情することはあって

地盤・看板・鞄の3バンを持たない政治家にとって、後援会を結成し事務所スタッフから選挙運動員まで必要な人員を派遣してくれる統一教会はありがたい存在だ。

というのは、世襲でない議員たちのことで、結局は血筋で守られている人間は手を汚さないという理不尽さが垣間見える。

また、統一教会は国内で右派的な運動を後押ししていながら、韓国では2世信者たちによって

日本の大学生による謝罪と日本政府への謝罪要求

などという運動も行っている。何を考えているのか分からない。結局は政治的問題に対するスタンスなどないのだろう。教団が肥え太ればいいのではないだろうか。資本家たちが、倫理観を捨て営利に狂騒する姿に似ていると思う。

最近になって統一教会の解散命令に対する署名が始まっている。宗教団体の法人格取り消しを求めるものだ。これについて識者たちが警句を発しているが、これもどうかと思う。
宗教法人格の取り消しで改善しないこともあるだろうが、少なくとも日本国政府が真っ当な宗教として認めているかどうかということの証にはなるのだから。法人格取り消しのデメリットを並べてもメリットと比べないと正確な議論にはならない。
識者たちは、大衆が熱狂して一方向に流れることに危惧を抱いているようだが、間違った方向に流れているのならともかく、昨今の報道に接していればそんなことは言えないと思うのだが、彼らの論法はあまり変わらない。
確かに、その時には正しいと思われたことが振り返ってみると間違っていたということはあるだろう。太平洋戦争だって開戦時は支持していた人も多いということが、その証左にはなるだろう。
も、それなら「立ち止まれ」と言うだけでなく、より良い方向を提示するのが識者の仕事ではないだろうか。現時点で判断できる正しさはどっちの方向なのか。「冷静になれ」なんて誰でも言える。学識を持つ者でなくとも言える。
大衆の熱狂によって世論が一方向に雪崩れをうつ、ことの危険性は分かるが、今の状況は、熱狂とも雪崩をうつ状況とも程遠いと思うし、その方向が間違っているとも思えない。

今回の統一教会の問題では政治家にも改めて失望したが、識者の人々の判断の遅さにも目が開かれたなと思う。