反=恋愛映画論/佐々木敦、児玉美月 著

古今東西の恋愛映画について語る内容。

恋愛映画だけに特化して著者の二人が対談し、その考えを掘り下げていく。私はこう思った、あなたはどう思ったか、そういう対話が繰り広げられる。それはとても楽しいことで、誰かと映画を観に行った後にカフェなり居酒屋なりに行って、あの俳優が良かっただの、あの場面のアレはどういう意味なのかだの、あの展開は強引過ぎるのではないか、とお喋りをすることは映画評論家や文筆家でなくとも楽しい。そして、そんな風に話すことで自分には気付かなかった解釈や感性に触れたりする。それは少し相手を知ることにもなったりする。

本書の中で取り上げられてる多数の映画の内で観たことがあるものは数えるほどだった。元から「恋愛映画」と銘打っていたならそんな映画は観に行かないのだから仕方がない。しかし表紙に『リコリス・ピザ』のアラナ・ハイムの姿があり、あの映画が好きになれそうな要素は沢山あるのに好きになれなかったことから、その謎がこの本を読めば少しは分かるのではないか、みたいな気持ちで手に取った。
その謎は解けなかった。
しかし映画本を読む楽しさは他にもある。
自分が観た映画なら、映画鑑賞の手練である評論家や文筆家は、その映画をどう観たのかという興味がある。そこに深い解釈があれば「ああ、そういうことだったのか」と思い、納得する。広い映画知識を持った人には、それなりの見識というものがあるのだから。それを元にもう一度観に行くこともあるだろう。
そして、観ていない映画について書かれているものはどうか。その中には興味を惹くものがやはりある。恋愛映画だからと敬遠していたけれど、どうやら面白そうな映画もあるようだ。そんな気持ちになって観たい映画が増える。
映画についての本を読むことにはそんな効能もある。