HEROES

兵庫県立美術館で開催された武者絵、浮世絵と刀剣の展覧会。

 

平家物語太平記里見八犬伝ヤマタノオロチ退治のような日本神話、それらに登場する英雄が戦う姿を描いた、武者絵と呼ばれる浮世絵と刀剣の展覧会です。武者絵は江戸時代のものが多かった。

まあ、格好良いですよね。

現代のような世界規模で文化が混交している時代と違って、純度の高い日本文化が描いた英雄像が見られる。それらに現代の漫画や映画に見られる外連味や、ヤンキー文化にあるような美意識も垣間見える。こういうものが日本文化の源泉なのだなあと思う。

物語でも現実でも英雄に憧れを抱くのはやっぱり強い存在だからでしょうね。我々は動物だから生きていくためには強い方が生存に適しているから、それを目指すし、そういう存在を追うようにプログラムされているのではないでしょうか。
肉体的な強さはわかり易いから格闘技やスポーツ選手のような存在に多くの人は憧れる。特に男子。女子にとっての強さや優秀さは美だから、きらびやかで華やかな女性に憧れる。そして男女共に知的な強さである知識や学力は、学歴としてわかりやすく示される。万能の強さは金。だからみんなお金を求める。強くなりたいから。誰も間違ってない。

刀剣を見た時に背中がヒヤリとするのはその長い刃渡りが研ぎ澄まされていて、人を殺すための武器だからでしょう。武器は強さ。だからそこに惹かれるのだと思う。

強くなることや強い者にあこがれる人々の気持ちが、こういう武者絵のようなものを芸術家に描かせたのだと思う。それは今も同じ。マーベルのようなヒーロー映画はわかり易く人気があるし、SNSなんかでも、行儀の悪い奴をこらしめてやった、といった悪を成敗するお話は真偽不明でも拡散されて多くのイイネが集まったりする。

我々は遺伝子に組み込まれた命令によって強さに憧れ、それを表現した芸術や娯楽作品に惹かれる。そうなるのは無理もない。でもちょっとそういうのに自覚的でないといけないなとも思う。感情や感覚だけを信じて考えることをしなければ獣と同じだから。
でも絵画を鑑賞する時には感性で受け取ればいいのだ、とも思う。

兵庫県立美術館の裏手にはこんなものも