フェミニズムってなんですか?/清水晶子 著

フェミニズムの概要について解説してくれる書。

以前、フェミニズムの歴史と概要が知りたくて『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』という本を読んだが、思っていたような内容ではなく、物足りない感じがあった。
本書を手に取ったのも同じで、昨今「フェミニズム」という言葉をよく目にするようになったが、さてその意味するところを自分は知っているのかという気持ちがあり、入門書として読んでみた。
3つの対談と16の節から成っている。1〜4節が、19世紀から現在までのフェミニズムの歴史で、4つの大きな波があったこと、そしてその時々にどんなことが問題点とされ議論されていったかということが分かり、最初に知っておきたい概要として丁度良い感じの知識量だった。歴史をもう少し知りたければ登場した人物名などを手がかりに掘り下げていくこともできるのだろうと思う。

5節以降は、現在も続くフェミニズムがどのようなことを問題として取り上げ、その過程でどんな議論があったかが書かれている。様々な論点があり、それぞれに専門的に研究している人がいるのだろうか。
その問題が多岐にわたるのには正直まいった。映画やドラマでの女性の描き方、ケア労働について、婚姻の問題、性教育、妊娠中絶、性暴力、トランスジェンダー性風俗。全てに関心を持って深く理解することは、とても自分にはできそうもない。でもそういうことを考えている人たちがいることを、たとえ大まかな知識であっても知っておくことは悪いことではないだろうと思う。

ただ、SNSでツイフェミだと揶揄されるフェミニストがいたり、アンチ・フェミニズムといった人たちがいることは薄っすら知っているが、それほど関心もないのだ。例えばアニメっぽい絵が性的な特徴を強調しているといって問題視したり、表現の自由を主張して反論したりするような事柄は、彼ら彼女らが闘っていることの経緯を追うのはそれだけでとても労力を要するから。

全体的には概要を知りたいという欲求に丁度良い程度に答えてくれる内容だった。いきなり先鋭的な議論や細部の研究に頭を突っ込んでも全体が見えなくなるだけだから。


社会運動でも政治でも経済でも、いわゆる「社会」に関わる事柄が少しでも良くなっていくことは万人が否定しないだろう。世の中が混乱して戦争と闘争の世界になればいいと思っている人間が、そう沢山いるとは思えない。それにはリソースを分け合うしかないと思うけれど、そうすることでプラスになる人間はそれでいいとしてマイナスになると思う人々には抵抗があるだろう。けれど、男と女が平等になって誰が困るのかよく分からない。女性がもっと社会で活躍すれば知恵も労働力も大きくプラスになって世の中の発展に寄与するだろうに、女性の社会進出を拒む理由がよく分からない。誰もマイナスになると思えない。
そういう到達する目的地を見失って目先の利益や権益やプライドや感情によって反応し、それを正当化する無理矢理な理屈を紡ぎ出すのは醜悪だとしか思えないが、SNSなどを見ていると、世の中には理屈や道理よりも感情を優先する人がとても多いと思える。
Twitterイーロン・マスクの登場によってゴタゴタしているけれど、そういう何よりも感情を優先して論理を軽視(というか無視)する人たちが世の中に沢山いるということを可視化したのはTwitteの功績じゃないかなとは思っている。