極私的2023年ベスト

晦日なので今年の総括を。

■映画

『別れる決心』

augtodec.hatenablog.com

韓国映画。大好きなパク・チャヌクの新作が今年のベスト。
観終わって深い余韻が続く映画だった。映像に深味と貫禄があって、物語には現代性もあって今の時代を描いている。そして普遍的なテーマも。今はもうアマプラで観られるんちゃうかな。

映画には貫禄ってものがあると思う。どの映画も2時間前後の映像と物語で観客を楽しませたり考えさせたりする。そのフォーマットは変わらないけれど低級なもの、高尚なもの、色んな映画がある。そうかといって娯楽映画は低級で芸術映画は高等だというわけでもない。深刻で高尚なテーマを題材にした映画だけが高級な映画というわけでもない。予算の問題もある。低予算の映画はやはりそれなりだし、巨額の予算で作られたハリウッド映画のようなものは見栄えがする、そういうことはある。しかし何か貫禄のようなものを見せつけられる映画というものがあるのだ。映画でなくとも見知らぬ人と会った時にその人の地位も職位も知らなくても何かしらの圧力を感じるようなことはあって、同じように映画にも見ている間、見終わってから格の違いを感じたりする映画はある。パク・チャヌクはすでに名監督の名声を得ている監督だという先入観もあるだろうが、彼の作品には貫禄を感じる。

次点

孤狼の血 LEVEL2』

augtodec.hatenablog.com

ビデオで鑑賞。日本映画、そしてヤクザ映画の底力を感じた映画だった。とにかく悪役ヤクザを演じている鈴木亮平が怖い。怖すぎて素敵。日本映画をちゃんとチェックしていないことを大いに恥じた傑作で、劇場で観なかったことを後悔した作品だった。

この映画が上映される前後は予告編を見なかったのだろうかと思う。月に1、2度は映画館に足を運ぶくらいには映画好きだから劇場で予告編を見ているのではないだろうかと思うのだけれど、予告編を見ても何も感じなかったのだろうか。なぜこんな傑作を劇場で観たいと思わなかったのか、自分のアンテナに引っかからなかったのかと思う。見逃した傑作というものは他にもあるのだろうなあ。

今年は他にも、鉄塔の上に取り残される高所恐怖症映画『FALL』、スピルバーグの『フェイブルマンズ』、右翼民族派鈴木邦男を描いた『愛国者に気をつけろ!』、アニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』、ケイト・ブランシェットが怖い『TAR』、寂しい男の映画『カード・カウンター』、SF映画『ザ・クリエイター』、日本映画『市子』、などなど良い映画を沢山観ることができた。夏頃にはビデオ鑑賞だけれどホラー映画も沢山観られた。思い返すと結構充実していたのかも知れん。しかしノーランの『オッペンハイマー』はいつ上映するんや?

 

■読書

『人民の敵 外山恒一の半生』

augtodec.hatenablog.com

九州のファシスト外山恒一の半生を描いた本。面白くて少し悲しくて、でも面白い。右翼とか左翼とか、どの政治思想からも剥離していてまったく独自の考えの人だと思う。でも外山恒一こそアナキストなのではないかとも思う。
それと、この本は自伝でなく評伝だったから良かったのでしょうね。本人も恥ずかしいと思っていることも書かれているし、外部の視点から外山恒一という人物像を描き出しているから良いのだと思う。外山恒一という人物に少しでも関心がある人は読むべき本だと思う。

次点

アナキズム入門』

augtodec.hatenablog.com

著者は森元斎、ちくま新書
アナキズムに少しずつ感心を持ち始めるようになって読んだ本。面白かった。そしてアナキズムというものが破壊的で破滅的な思想ではないということも分かった。よく分かってないのに漠然としたイメージで偏見を抱いていた。とはいえ新書一冊でアナキズムが分かった気になってもいけないと思うから色んな本を読んでみなければならないだろう。そう思うようになった1冊。

読書では信田さよ子の『家族と国家は共謀する』、徳本栄一郎の『田中清玄』も特に良かった。新書ではあるが『リベラルとは何か』、『保守主義とは何か』、『民主主義とは何か』といった本を続けて読んだのも良かったと思う。

 

■音楽

クズだらけの天使達

augtodec.hatenablog.com

コロナが明けたかどうかという頃に見に行ったライブ。当日会場では、一応マスクはしておいてください、みたいなお達しはあったような気がするが忘却の彼方。
四日市のガレージパンクバンド、ガソリンを目当てに見に行った。コロナの間はライブを見に行けなかったので久しぶりのライブ、とても楽しかった思い出。

他にも京都のパララックス・レコード主催のライブなど幾つかを見に行くことができてライブについては良い年だったかも知れない。
ただ流行の音楽を聞くことは殆んどなくなった。レコード屋に最新の音楽を探しに出かけることも少なくなった。経済的に困窮しているからというのが主たる理由だが、サブスクで聞けてしまうというのがとても大きい。CDは殆んど買ってないんじゃないかな。サブスクにしても流行と関係ない音楽ばかり聴いている。

よく聴いたのはこの曲。

www.youtube.com

 

貧乏でどうしようもない。しかし時間は沢山ある。しかしお金はない。といいつつ映画だけは観に行きたい。なので今年は良い作品を沢山観られた。読書する時間もあるから本を読む時間も確保できて色んな本が読めた。ある意味幸せだと思うが、ただやはり貧乏の辛さというのは重くのしかかっている。