過去のない男

2003年、フィンランド/ドイツ/フランス、アキ・カウリスマキ監督

列車に乗って都会へ向かっていた男は、駅を降りて公園のベンチで居眠りをしてしまう。すると暴漢に襲われてしまい、病院へ担ぎ込まれるが一切の記憶をなくしてしまっていた。男は、その病院から抜け出して浮浪生活に入ってしまう。

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20年前の映画だから古い映画だといえばそうなのだけれど、もっと昔の映画を観ているような気がする。台詞はぶっきらぼうで場面展開はゆるい。身元不明の浮浪者になった男が色んな人に助けられて、やがてその正体が判明するというお話もゆっくり進む。昨今の、次から次に場面が展開していく性急な映画と比べるべくもない。

昔の山田洋次の映画のような趣があって善人しかでてこない。唯一の悪漢も最後には制裁を受ける。しかし物語の展開や結末はどうでも良くて、映画を観ている間は、映像の息と間で笑ったりほっこりしたりしている間の時間が楽しい。物悲しくもあって独特のテンポがあり、その空気に酔っていればいい。先日観た『街のあかり』同様に楽しい作品だった。