認知バイアス辞典/高橋昌一郎 監修

認知バイアスというものについて論理学・認知科学社会心理学の分野で解説する本。

 

まえがきに

認知バイアス」とは偏見や先入観、固定断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉

とあって、書店でパラパラと中身を見て面白いかもと思って読んでみた。

昨今は識者のような顔をしている人たちが、いわゆる詭弁というものを弄することがある。学者のふりをしたコメンテーターであったり、何をやってるのか分からない起業家だったり、それこそ政治家であったり。
以前、ごはん論法がどうだとかいう本を読んだのも、そういう人たちのやり方を知るためだったと思うが、本書を読んだのもそんな気持ちからだった。

読んでみると色んな方法があるのだなと思うし、自分も知らぬうちにそういうものにハマっているのだなとも思う。詭弁だなどと書いたけれど、そういう方法だけが書いてあるわけではない。

例えば、「単純接触効果」という項では

初めて接したときは好きとも嫌いとも思わなかったような刺激に繰り返し触れることで、行為が少しずつ増していく現象のことを言う。

とある。
これなどは政治家が頻繁にメディアに出演することで好意的な評価を得ていく実際の現象と合致していて大阪ではそれが実際に行われている。

「内集団バイアス」の項では

自分が所属している集団(内集団)やその集団のメンバーのことを、そうでない集団(外集団)やそのメンバーよりも好意的に評価し、ひいきをする傾向があることがわかっている。

とあり、こういうものはナショナリズムや過剰な愛国心の発露にもつながることだろう。

また、「心理的リアクタンス」の項には

人は、本来持っている選択や行動の自由を他者に脅かされたとき、その自由を回復しようとして、あえて妨げられた行動をしようとすることがある。

とある。ポリティカル・コレクトネスというものに過剰に反発する層がいるけれど、彼らの行動は、発言や表現の自由が制限されていると感じていてそれに反発しているが、社会心理学で「心理的リアクタンス」と呼ばれるもので説明ができそうに思える。

そんな風に今起こっている事柄が、すでにある学問の知識で説明できたりしそうなのは面白かった。

この本の出版元はフォレスト出版というところでビジネス書や自己啓発書といった自分が読まない、むしろ毛嫌いしているタイプの書籍を多く出版している。
本書にあるようなテクニックをわざと使って人を説諭したりするのって宗教の勧誘やマルチ、そしてビジネス書や自己啓発書だったりすると思うが、フォレスト出版こそがそういう出版社なのに大丈夫なのだろうかと思ってしまった。いらん心配だけれど。