侠拳/若野康玄 著

関西で右翼団体に所属し、山口組傘下の組幹部でもあり、空手家であり格闘技振興にも尽力した著者の知る関西における右翼と暴力団の関わりが綴られた本。
副題は「関西右翼・ヤクザ関係秘史」

何が切っ掛けだったか笹川良一のことをもっと良く知らねばならない、という気持ちになった。何が切っ掛けだったか覚えていないが。で、まあ検索したり図書館にリクエストしたりしたわけですが、その中で少し気になっていたこの本が書店にあったので読んでみました。

なかなか興味深い内容でした。
所謂、思想史だとか、ある思想における活動史なんてものは殆ど中央でどういうことがあったかが記録されているわけですね。登場人物もそれを記録する人もそれを出版する会社も全部が東京にあるので。でも右翼でも左翼でも東京にいるだけじゃなくて地方で活動している人も当然いるわけです。当たり前ですけど。
関西というのは日本で二番目の都市圏なのでそれなりにヤクザも右翼もいらっしゃる。それなりにってこともないけど。そういう大都市圏でどんな人物がいてどんな団体があって、その関わりや、どんな栄枯盛衰があったのかが書かれている。登場人物の殆どは知らなかったけれど流石に大物の人物名は自分でも知っている名前が出てくる。でも自分たちが住む地方の右翼のことを何も知らなかったなと思う内容だった。

また、ヤクザの成り立ちや右翼というものの出自も書かれていて、そのことを示す参考文献も読まなければならないと思うものが多かった。
別に思想だけじゃなく、芸能も文化も政治も何もかもが今は東京の視点で東京で起こっていることしか記録されていない。でも地方でもそれを支える活動がある。そういうものの記録として貴重な本だと思う。

著者の若野康玄さんは本年2月にお亡くなりになったらしい。合掌。