エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

2023年、米国、ダニエル・クワンダニエル・シャイナート監督作

米国でコインランドリーを営む中国系の女性エブリンは様々な問題を抱えていた。夫は頼りなく、娘が連れてきた恋人は女性でエブリンには理解できなかった。そし父親がやってくる、国税庁にも出向かなければならない。
そんな彼女が、マルチバースからやってきた夫から宇宙の敵と戦うことを求められ、あらゆる世界に飛び込んで様々な能力を獲得しながら戦う羽目になる。

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ついていけなかった。
「ついていけない」などと言うと「呆れてしまった」と受け取られそうだが、この映画の中で描かれる物語と映像のスピードに文字通りついていけなかった。
マルチバースという言葉は、米国のヒーロー物の映画で使われているらしいということはなんとなく知っていて、でもその手の映画は殆ど観ないので、実際どういう風に描かれているのかは知らなかった。ただ、こちらは読書冊数こそ少ないものの小学校の時からSF小説を読んできている身なので、並行世界みたいな考え方でしょ?了解了解、くらいに思っていた、甘くみていた。

映像のスピードが速くて何が起こっているのか理解しようとしている間に次の世界へ行っているようなことが幾度もあり、もう途中で諦めた。速度に追いつけない。物語を追うのも途中で諦めてしまって、なんだか分からないがカンフーは良いよね、くらいのノリになった。幾度も挟まれるしょうもないシモネタも、アホやなと思いながらクスクスと笑って観ていた。
なので、悪の正体がどうしてあんな感じなのか、各展開に無理はないのか、理屈や辻褄はあっているのか、みたいなことは皆目分からない。あまりにも速すぎて、もう追いかけるのは止めて、分かりそうなところだけ観ておこう、みたいな感じになったしまったので。

めくるめくマルチバースの世界は色彩豊かで楽しいし、カンフーアクションも楽しい。くたびれた中年女性が叶わなかった夢の世界を幻視するのもちょっと悲しくて切ない。そして母娘という意外と難しい関係の映画でもあるのだろう。
しかし、映画の内容をきちんと理解しているのかと言われれば、はっきりと「理解していない」と答える自信がある。そしてたとえ勘違いであっても理解したと思えない映画を絶賛するということはできない。まあまあ楽しかったと答えざるを得ない。
しかし賞レースでも評価されているらしいし、この映像のスピードにみんなついていけているのだろうな。この映画のテンポが普通のリズムになったりするのだろうか、そうなるなら俺はもうこの先だめかも知れない。