MASONNA VS. BANANAMARA/MASONNA
1989年にVANILLA RECORDSからリリースされた『MASONNA VS. BANANAMARA』の再発盤。MASONNAの音源としては初期のものとなる。リリースはイタリアのノイズレーベルUrashimaからで、このレーベルはジャパニーズノイズの重要な盤の再発を続けていてSolmania他の過去音源などもリリースしている。注目すべきレーベルだと思う。小遣いが圧倒的に不足していて追いきれないのが悔やまれる。
Masonnaのアルバムとしては二番目のものとなる。聴くと、後のアルバム『Freak-out Electrolyze』や『Vestal Spacy Ritual』よりも音の密度は若干薄いという感じはあるが、そんなことは問題ではない。十分に脳みそをイカれさせる音がぎゅうぎゅうに鳴っている。そして先に上げた後期のアルバムと違ってバンドサウンドのような高揚感も詰まっている。
そして、Masonnaの音の特徴である叫び声と電子雑音のカオスとの絡まり合いはこの段階で十分に完成されている。ごたごた言ってますが結局のところカッコイイということでしかない。
これは1989年のアルバムなのだ。2023年から振り返ると34年も前。なのにこの音楽を継承し発展させた音楽は以後のMasonnaのアルバムにしかないのではないだろうか。
進化の系統樹で途絶えた種というものがあるが、それは劣っていたということではない。環境に適応することが出来ず生き延びることができなかったというだけだ。
Masonnaの音楽は明らかに素晴らしくどこにもない希有なものだが、その系統は途絶えつつある。Masonnaのライブが久しく見られないのだからそう言ってもいいだろう。
しかしこんな音楽はどこにも見当たらない。オリジナリティが音楽にとってどれほど大事なものか考えてみて欲しい。それでいてエモーショナルで、聴く者の気分をはっきりと高揚させる。音楽として素晴らしいのだ。圧倒的に魅力的なのだ。
環境とは、しょうもない大衆が支持するJ-popが蔓延る世界だ。あいつらがこういう音楽に対して聞く耳を持っていないから駄目なのだ。本当にあいつらはどうしようもない。お昼間のFMラジオからMasonnaが聞こえてくる世界こそが素晴らしい世界だ。そのことが分からない奴はこのレコードを聴く必要も資格もない。