死都調布/斎藤潤一郎

指を発泡した女、蛇をタコスにして食う男、タクシー運転手を罵る女、狂熱のカルト集団、地獄の番犬、火を吹く骸骨……
そう、ここは死都調布…血と暴力の景色……

なんとなく書店で表紙が気になって買ってしまった。貧乏による困窮があっても本を買うのは止められない。
一昔前ならガロに載っていそうな漫画だった。つげ忠男のようなアウトローのやさぐれ感があって、つげ義春の不安恐怖症が漫画に乗り移ったような『必殺するめ固め』で繰り広げられる地獄のような幻惑もある。あと、それと、鈴木翁二を思わせるような雰囲気も。絵柄かなあ。

こんな感じの漫画だけど

トーチweb「死都調布」http://to-ti.in/product/shit-chofu

 

勤勉に真面目に働く、いわゆる一般的な会社員のような、世の中の大勢である人物は登場しない。凶暴な犬や凶暴な女やどうしようもない男が登場してうごめいている。物語にはそれまでの展開を収束させる結末も用意されていない。しかし読んでいる間が楽しいのは確か。
少年漫画だとか青年漫画だとかで何万部も売れる漫画と肩を並べることはないのだろう。明るく朗らかでわかり易い感動を与えてくれる漫画ではないのだから。恋も友情も描かれていないし、登場人物の誰一人として尊敬に値する人物ではない。でもそんな漫画は楽しい。

どうしてこのような漫画が好きなのだろうか。なぜ書店で表紙を見て引き寄せられるように買ってしまうのだろうか。金もないのに。

この漫画と作者のことを検索している内にセミ書房の『架空』という漫画誌があるのを知った。同人誌みたい。読んでみたいけど金が。