その街の今は/柴崎友香 著

20代のカフェでバイトをしている女性は、昔の大阪の写真を集めていたが、同じようなことに興味を持っている年下の男性と出会う。現代の大阪を舞台にした小説。

その街の今は (新潮文庫)

その街の今は (新潮文庫)

 

 

とても透明な小説。今どこかにいる人の日常を覗き見ているような感じ。どこにでもありそうな、どこにでも居そうな、そんなお話。
常々、特別な出来事が起こらなくても小説として良いのではないか、我々は劇的な物語を見せられることに慣れてしまっているのではないか、本当に尊いのは日常であって、そういうものを文学者は描くべきではないだろうか、などと思っていたけれど、そういうのがこういう小説なのだと思う。
しかし読後感は少し物足らない。やはり何がしかの物語的な起伏は必要なのではないだろうか、しかしそう思うのは自分が先述のように劇的な物語に馴れてしまっているからそう思うのだろうか、などとも思う。でも正直物足らない。

なんだろう。ここに登場している人物たちは満ち足りているように見える。何も鬱屈がない。生活に充足している人の物語にしか見えない。彼等彼女等に少しも共感することがなく、さらさらと読み終えてしまった。