コードネーム・ヴェリティ/エリザベス・ウェイン 著

第二次大戦時、ナチス占領下のフランスに潜入していた英国の女性スパイが囚われる。ナチスによって過酷な尋問を受ける彼女は、尋問に応える代わりに小説めいたものを書き始める。それは彼女の親友である民間飛行士の女性パイロットの物語だった。しかしその物語にはある意味が隠されていた。 

コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)

コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)

 

 面白かった。帯には

「謎」の第一部。「驚愕」の第二部。そして、「慟哭」の結末!

と書いてあってその通りだった。

第一部は英国のスパイであるクイーニーと呼ばれる女性がナチスに囚われ、彼女が捕虜として囚われの身の状態で書いた物語のような手記が続く。そして第二部では…、というところまでしか言えない。ミステリーのネタをばらすほど不作法なことはないから。

しかし第一部はそれほど「謎」ではないのです。勿論、第二部で明かされる様々なことが埋め込まれているし、英国の機密情報を書けと言われていている彼女がそのような物語を書くことは謎ではある。記述が食い違うと思われる部分があったり意味の分からない部分があったり謎な部分はある。
しかし民間の飛行士だった女性と女スパイになる女性が友情を紡ぎ出す過程が描かれていて、この部分が戦時下の青春小説として十二分に面白い。飛行機に憧れる女の子が民間の航空機のパイロットになり、やがて戦争の補助として軍用機を操縦することになり、そしてその過程で彼女と出会い親密になる。そんな二人の成長を記した物語として楽しめる。

で、第二部ではそれらの絡まった糸がほどけて再び編み合わされる様が驚愕なのです。こんな構成の小説もあるのかと思えた。本当に感心したし、第一部で描かれた女性二人の友情があったからこそ泣けた。ミステリーとしての謎解きだけにおさまらず、戦争の理不尽さを描いた小説としてもとても興味深い小説だった。

本書は米国のヤング・アダルト部門での賞を受賞しているらしい。ヤング・アダルトというのは中高生、若しくは若者向きくらいのことだろうか。日本ならライトノベルなんかがそうなのだろう。米国のその年代に向けた作品の奥深さに感心すると共に、日本の作品でも大人が読んで感心するような作品が自分は知らないだけでいっぱいあるのだろうということを思ったのでした。