デトロイト

2018年、米国、キャスリン・ビグロー監督作

1967年、米国デトロイトで起こった大規模な暴動は、警察だけでを鎮圧できずに州兵までが出動する事態になっていた。暴動が発生した夜に、あるモーテルから警官に向けて発射されたおもちゃの銃が切っ掛けでモーテルの客たちは警官から過酷で無法な尋問を受ける。事実を基にした物語。

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あまり感心しなかった。
米国の暴動が黒人に対する差別的な警察の活動が鬱憤となって累積しそれが爆発したものだということは分かる。そして映画で描かれている黒人少年たちへの白人警官の尋問が常軌を逸していて差別的な行動だということも分かる。しかしあまりにも善と悪、白と黒とに明確に線引きされた描き方はどうなのだろう。その場所で行われたことが、明らかに権力による悪と罪もなき市民が受けた迫害だったのかも知れないが。

歴史的な史実を描くのに現代の基準で善と悪とに明確に区分けしてしまうのは危険、というか簡単過ぎないだろうか。今の常識で問えばそうなのだろうが、過去の問題を現代の物差しで断罪するのは甘過ぎやしないだろうか。
善と悪とにきっぱり分けてしまう物語を簡単に信用することができない。そんなものはマーベル製のヒーローショーでやればいいいのではないだろうか。善にも影があるし悪にもそれなりの理由がある。そういう苦さを描き出した物語の方に奥の深さを感じてしまう。善悪がはっきりしたものは分かり易いのだろうけれど。

陰湿な白人警官を演じたウィル・ポールターが死ぬほど憎たらしい。映画を観ている間吐き気がするほど憎い。これは俳優としては最高の仕事をしたということではないだろうか。素晴らしい。素晴らしく憎い。

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