アイ・イン・ザ・スカイ

2013年、英国、ギャヴィン・フッド監督作

英国軍は、アフリカ・ケニアに潜むテロリストの居場所を米軍のドローンとの共同作戦でつきとめた。隠れ家では自爆テロの準備が進行しており、すぐに攻撃するべきだと主張する軍と法的、政治的要件を満たそうとする政治家の間で作戦遂行の決断は揺れていた。そしてテロリストを攻撃しようとする場所の傍では少女がパンを売っていて彼女も被害に及ぶと考えられらた。それらをドローンのカメラから監視しながら議論と決断がせまられる。
原題は『Eye in the Sky』

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凄い戦争映画。
テロリストが自爆テロを準備していて、今ここで叩いておかなければ多数の人が被害に会う。しかし今テロリストを爆撃すれば、その場所で被害に会う子供がいる。見えない将来の被害者と目に見える一人の被害者のどちらをとるかということが天秤にかけられる。
ロッコ問題と言ってしまえばそれまでだけれど、そんな形式な問題ではなく現実にその問題を落とし込んだ時に人間にどのような葛藤があるのかを描いている。

作戦を遂行しようと働きかける軍人、なんとか決断をせずに済ませようとする、若しくはあっさりと無慈悲に決断する政治家、そして命令に従うだけの存在でありながら命令に躊躇する兵士。色んな人間が描かれている。自分がその立場になったらどうするか、どう思うかと考えればとても簡単に結論は出ない問題ばかりだと思うが、そんな難しい事柄を映画的にサスペンス満載で描いていて、娯楽作品としても満点だと思う。

素晴らしい脚本は南アフリカの映画監督で『ウルヴァリン』の監督でもあるギャヴィン・フッド。出演陣には亡くなったアラン・リックマンが中将の役を演じているが、特筆すべきは英国軍の女性大佐を演じるヘレン・ミレンが凄まじかった。
様々な政治家、軍人が出てくるが、男ばかりでなく、ヘレン・ミレンを筆頭に女性陣がその中にいて、軍事作戦という行動を男性性によるものでなく描いているところも凄く良いと思う。

密室で議論が交わされる映画というとシドニー・ルメットの『12人の怒れる男』だったり、最近観賞したタランティーノの『ヘイトフル・エイト』なんて面白い映画があるけれど、本作は英国、米国、そして政治家と作戦司令部、パイロットと皆いる場所が物理的に離れているけれど、ドローンの映像を見ながらオンラインで繋がっていて、密室議論映画の変形とも言える形式だと思う。

面白さも先に挙げた2作に匹敵する内容だと思うけれど、とにかく考えさせられる戦争映画でした。