僕の名前はズッキーニ

2016年、スイス・フランス、クロード・バラス監督作品

母親を失くした9歳の男の子、ズッキーニは孤児院に預けられることになった。しかし其処暮らしている子供たちは皆分けありで暗い過去を引き摺っていた。

最初こそ衝突はあったものの、やがてズッキーニは孤児院での暮らしに慣れていく。そこへ新しく入所してくる女の子がいた。

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予告編を観てお分かりのように人形アニメーションの作品です。我々が人形アニメーションの映画を観賞する時には、これは人形を動かしてひとコマずつ撮影した映画なのだということを了承しながら観る。膨大な時間と労力をかけて映像が作られているということを意識しながら観る。なので「人形なのにこまやかな演技がなされていて凄い」とか、「コマ撮り撮影なのにこのスペクタクルシーンは驚くべきものだ」という感動がある。つまり人形アニメーションの技術に感動するという点が大いにある。

本作は確かにそういう点でもとても行き届いた映画だと思う。人形の細やかな動き、愛らし表情、手の込んだセット、そのようなものに対する感動は確かにある。

しかし映画を観ているとそのようなことは忘れてしまう。登場人物の子供たちは親が犯罪を犯して刑務所に入っていたり、故国へ送り返されたり、何かしらの悲しい過去を持っている。そんな子供たちが対立し、やがて打ち解け、ついには恋にまでおちる。その様を観ていてどのキャラクターをも好きになる。
恐らく実写映画で同じ物語を作っても同じ感動は得られないだろう。リアルだから。人形が演技することによってファンタジーのような味わいがあり、実在の人間の生臭さが消える。フィルターを通しているような感じ、少しろ過された感じ、浄化されたような感じ。

本作にはファンタジーの要素は皆無だけれど、人形アニメでしか味わえない情感を使って暗い話を明るく可愛く見せてくれる。泣ける人形アニメーションなんて観たのは初めてだと思う。