ニューオーダー

2022年、メキシコ・フランス、ミシェル・フランコ監督作

メキシコの裕福な大邸宅の中では結婚式が繰り広げられていたが、外では民衆のデモが暴徒化していた。そこへかつての使用人の夫が妻の手術のためにお金を融通してほしいとやってくる。親族たちは彼を追い払おうとするが、新婦はなんとかしようとかつての使用人のところへ向かい暴動に巻き込まれる。

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傑作。なんといっても1時間半という上映時間の中でこれほどの物語を展開させたことに驚愕する。
民衆暴動から政権はひっくり返り新体制が発足するが、新婦は兵隊によって拉致される。この兵隊たちは誘拐ビジネスを行っていて、新婦の家庭から身代金を巻き上げようとする。新婦が無事元の家に帰れるかどうかが物語の焦点になるけれど、その周囲で描かれるものが厳しい。
タイトルの『ニューオーダー』は「新体制」の意味。革命もしくはクーデターで新政権が発足した後には、革命勢力は権力者になり抑圧者になる様が描かれている。そして、その内部には旧体制と同じように腐敗もあるし、元の体制で権力者であったり有力者であった者はその権力を維持している。そして都合の悪いことの証拠は隠滅されてしまうことも描かれている。それらがたった90分ほどの映画の中で描かれていて驚愕と言わざるを得ない。

この映画でのすべての場面は物語の転換点になっていて息つく暇もない。けれどそれらが説明的な台詞で説明されるのではなく、映像と最小限の台詞で展開される。凄い。

救いのない話ではあるものの、その濃密な展開と権力の腐敗を皮肉に描いていて傑作と言わざるを得ない。素晴らしい映画。

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