太陽の塔/森見登美彦 著
私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった! クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
面白い。失恋した大学生の挙動不審で無為な日々が綴られているだけのお話で、コスパとかタイパなどというものとは無縁の、無駄でしかない時間が過ぎ去っていく。
文章が面白くて硬い語彙があるかと思えばふにゃふにゃに柔らかい表現もあったりして、読んでいる間ずっと可笑しい。
この小説は森見登美彦のデビュー作だそうで、なるほど『夜は短し歩けよ乙女』と似た感じの場面が所々にある。この2作の間に『四畳半神話体系』があるみたいなので、それも読んでみなければなるまい。