小隊/砂川文次 著

軍事描写のあまりのリアルさに話題となり、専門家をも唸らせた『小隊』にデビュー作『戦場のレビヤタン』を合本して文庫化。
ブラックボックス」で第166回芥川賞を受賞、元自衛官という異色の経歴をもつ作家が放つ、衝撃の戦争小説3篇。

 

タイトル作の『小隊』はロシア軍が北海道に上陸して、それを迎え撃つ自衛隊の話。元自衛官らしいリアルな描写が凄いと思うけれど、よく考えると自衛隊は本当の戦争を戦ったことがないのだと気づく。
収録作『市街戦』は自衛隊での行軍、戦闘訓練を描いたもの。読んでいると行軍での肉体の疲労感が伝わってくる。文章でそのような体感を再現できるのはやっぱり凄いことだと思う。
書店で日本の現代文学の棚は、ちょっと前までは著作者が男性か女性かで分けていたものだけれど、この頃はそういう区別をしていない。そんな棚を眺めていると最近は女性作家のものが目立つ感じがあって、男性作家の影が薄いようにも思える。
軍隊を描いているということもあるだろうけど、文章が硬質で男性作家が描いたもの独特の雰囲気がある。