女の人差し指/向田邦子 著

ドラマ脚本家デビューのきっかけを綴った話、妹と営んだ小料理屋「ままや」の開店模様、人形町からアフリカまで各地の旅の思い出、急逝により「週刊文春」連載最後の作品となった「クラシック」等、名エッセイの数々を収録。日々の暮しを愛し、好奇心旺盛に生きた著者の溢れるような思いが紡がれた作品集。解説・北川信

向田邦子のエッセイ集。テレビドラマや食べもの、旅に関するエッセイなど。どれも心地良い筆致だけれど、食べものに関する作が特に筆がのっているような気がする。食べものについての話題は場所と時代が変わっても永久に語られるのではないだろうか。テレビなんて食い物のことばかりやっているような気がする。

向田邦子のエッセイはどれも読んでいて気持ち良いのだけれど、なぜそうなのかは分からない。分かっていたらそういう風に書けばよいのだから。それでも無理して考えてみると、あまり対立を煽るような話題がないってことかな。ドラマの話は著者が脚本家として活躍していた経験からのお話で、同じ経験を持っている人なんてそうそういない。食べものの話も争いになりようがないし、人の旅の話にツッコミを入れる人もいないだろう。話題が平和ってことはあるかも知れない。しかしそれだけではなくて向田邦子の文体、文章が良いってことがあるんだよな。でもその理由は分からないのです。簡単に分かれば苦労しないって話。