サクラメント 死の楽園

2015年、米国、タイ・ウェスト監督作

カメラマンの男の妹はドラッグから抜け出すために厚生施設にいたが、やがて奇妙な教団に所属し、彼らの元で暮らしているという。妹に会うために教団を訪れるカメラマンに取材班2名が同行して取材することになった。
しかし教団の教区は飛行場からヘリコプターで行かなければならないような辺鄙な場所で、教区の入り口にはマシンガンで武装した信者が待っていた。
教区では信者たちが寄り添い、皆満足して平和に暮らしているようではあったが、取材班の男たちは、ある親子から「子供だけでもこの場所から連れ出して欲しい」と懇願されるのだった。

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夏の自主的ホラー映画祭りが継続中。先日観た『X』が印象深かったので同監督の作品を鑑賞してみた。

有名なガイアナ人民寺院集団自殺を模したお話を描いている。予告編でも出てくるのでネタバレでもないだろう、映画の中で最後は集団自殺が起こる。しかしこの映画が人民寺院のことを描いていると知って観たのなら最後にそうなることは分かり切っている。

取材班とカメラマンの男の手持ちカメラで捉えた映像で撮影されているという疑似ドキュメンタリーの作りになっている。モキュメンタリーなので生々しさが存分にあって、それが次に何が起こるかを予想させず、恐怖に繋がっている。

宗教には常々興味があるのだけれど、どちらかというと、なぜそんなものにハマってしまうのか、なぜそれほど熱狂的に信じられるのかといった人間と宗教の関係性の不思議さに興味がある。
しかしこの映画でそのような人間と宗教の因果のような深いものは描かれない。1時間半ほどのコンパクトな映画でそんな深いテーマを思索しているひまはなく、映画は怒涛のように最後の集団自殺へ転がっていく。でも逆にその無慈悲な感じが嫌いになれない。

映画を観ていて似ているなと思ったのは『ミッドサマー』。閉鎖的な謎の宗教集団の中に入ってみると違和感があり、そこに恐怖の萌芽がある感じ。幻覚剤が登場するところも少し似ている。でも『ミッドサマー』の方が映画的に美しいし洗練されている感じがある。それは『サクラメント』の方はモキュメンタリーなので凝った画作りで完成された構図で撮影されていないからだろう。疑似ドキュメンタリーなのにそんな作り込んだ絵があれば逆に興ざめしてしまうのではないだろうか。『ミッドサマー』の方はその点で色彩や構図など色々と行き届いている感じがあった。でも本作は、モキュメンタリーの荒々しさを存分に生かした作りで、それが映画的恐怖を生み出していた。

タイ・ウェスト監督作はまだまだ他にも観てみたい感じがする。