ハウス・オブ・グッチ

2022年、米国、リドリー・スコット監督作

有名ブランド、グッチ一族の興亡というか内紛というかそういうお話。

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面白かった。一族の中での権力奪取の攻防を描いたお話で、そういう事は自分の身近では極力遠慮したい出来事だけれど、他人事ならば楽しく見ていられる。富と権力といっても自分には縁のないものだから「ええぞもっとやれ」みたいな野次馬根性で気楽に見ていられる。
内紛とは言っても家族の中で行われるのだから、そこには愛憎というものがある。会社での派閥抗争みたいなものは冷酷だけれど、血が繋がっているのだから憎しみがあったとしても愛情を持って接していた時期もあるわけで、そういう事情がややこしくさせる。
レディ・ガガという人は名前は知っているけれど歌声を聴いたこともなく、他の映画でも観たことがなかった。でも本作での彼女は逞しく、それでいて女性らしい可愛らしさと妖艶さがあってとても魅力的だった。愛らしくも見えるし憎くも見える。
一番心に残ったキャラクターは、ジャレッド・レトが演じたパオロ・グッチ。一族の中で無能扱いされてどこにも居場所がない。どこにいっても能力のない人間というのはこうやってバカにされ不遇な人生を歩むのだなと思う。一族を抜け出して自由に生きればいいのに、と思うのだが、気に入らない仕事であっても我慢して勤め続けることが誰にでもあるように、そういうのってなかなか難しい。

物語を語るのに無駄な部分はなく、映画を観ていて引っ掛るようなところは何もない。映像も美しく、主演俳優たちは達者な人ばかりで安心して観ていられる。しかし、なんだかあまりにもソツがないのでそこが不満という感じもある。リドリー・スコットという監督は早撮りで有名らしいが、よくそんなのでこんな風に何の瑕疵もない映画が作れるのだなという感心もあった。