神戸、書いてどうなるのか/安田謙一 著

神戸で生れ育った著者が地元を紹介する本。 

神戸、書いてどうなるのか

神戸、書いてどうなるのか

  • 作者:安田 謙一
  • 発売日: 2015/11/26
  • メディア: 単行本
 

 
安田謙一さんの文章には、CDジャーナルやミーツ・リージョナルなどの連載で接していて、軽やかでそこはかとなく可笑しい文章を楽しませて貰っている。

一つの場所や物事を見開き2ページの文章で紹介する構成になっていて、神戸のスポットが幾つも紹介されている。

こういう「街」を紹介するものを読むと、そこに出てくるのはやっぱり「店」なのだなと思う。蕎麦屋、中華屋、お好み焼き屋といった飲食店から、書店、映画館、レコード店などが想い出と共に紹介されている。
いつも思うが、幾ら街をうろついても、その街路を全て憶えてしまうほどに熟知していても、そこにある店を知らなければ街を知ったことにならない気がする。結局通り過ぎているだけのような。ただよく通り過ぎているだけ。

著者の文章の軽やかさはどういうところからくるのか、と常々思っていたが、第五章「神戸育ちのてぃーんずぶるーす」を読むとその一端が知れる。
子供の時に親が離婚し、母親が水商売の仕事に行く夜の間に一人の安田少年は夜の神戸の街を闊歩していたらしい。時には母親の彼氏である刺青の男のお金をくすねてレコードを買ったり、14歳でストリップ小屋に通った話などが書かれている。
街中の子供で自由でいて、大人の娯楽がすぐ傍にある環境で育ったことが分かる。高校生の時は学校をさぼって、海辺でビールを飲んで、街をうろつき、映画を観て帰るという人だったらしい。
そういうちょっとした不良だったから文章が面白いのだろう。なぜ不良の話が面白いのかはずっと考えてるけど未だによく分からない。

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