ヨーロッパ横断特急

1966年、ベルギー・フランス、アラン・ロブ=グリエ監督作

パリからベルギー・アントワープへ向かう列車の中で映画作家3人が物語の構想を練っている。麻薬の運び屋がパリとアントワープを往復する犯罪映画のストーリーを。その通りに列車の内外ではドラマが進行する。

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この映画、実験映画の古典というような位置付けみたい。アマプラの紹介文にそのようなことが書いてあった。その辺りに明るくないので作品名も監督も知らずに観た。白黒映画の犯罪映画なのだろうかと思って。

観てみると、確かにそういう実験映画的な感じはある。列車の中で相談する映画作家の姿が本当のものだとすると犯罪の描写の方はただ単に妄想のようだが、実際に交差する場面もあって、虚実が入り混じる、というか全部嘘、みたいなややこしさがあって、そこら辺が実験的なのだろうか。
メタフィクションだと言ってしまえばそうなのだけど、メタフィクションということが当時は斬新だったということだろうか。ラストシーンでも映画作家たちと麻薬の運び屋が駅で交錯する場面があって不思議な感じがある。

犯罪映画としてみると、昔の映画だから今時の作品のように軽快なテンポで次から次へ楽しませてくれるというものではない。でもそれは昔の日活アクション映画なんかを見ても同じで、随分昔の映画だということを割り引いてこちらは観て楽しむのだから構わない。

メタフィクションどうこうよりも昔の犯罪映画として結構面白いと思った。観ている間退屈しなかったし、モノクロで映し出される当時の街の風景が味わい深い。物語がどうだとかオチがどうだというより、その途中が楽しいというのは娯楽として大事なことじゃないだろうか。ソヴィエトのタルコフスキーなどは芸術映画として崇め奉られている感じがするけれど『惑星ソラリス』や『ストーカー』などは観ている間ずっと楽しくて充分に娯楽として楽しませて貰ったから。

難しい解釈もあるのだろうけれど、昔の映画として普通に味わい深い。アマプラの紹介文にも「最も成功した、理解し易い実験映画」って書いてあったから。