二重生活

2016年、日本、岸善幸監督

大学院生の女性は、100人からアンケートをとり、意見をまとめることで修士論文を書こうとしていたが、教授から対象を100人から1人に絞ってみる理由のない尾行を提案される。
迷っていた彼女は、書店で近所に住む男性を偶然見かけ尾行してみることにしたが、彼は妻ではない女性と密会していた。以後、彼女は男を尾行しつづける。

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女子大生が妻子ある男性を論文執筆の為に尾行するというお話。そんなお話にリアリティがあるとは思わない。大学教授がこんなこと提案するだろうか。哲学科の教授という設定だけど、そういうもんなの?

でもそれ以外の場面はとても日常的。普通のどこにでもありそうな光景の中でドラマは展開していって何も飛躍したようなことはない。浮気がばれた男は修羅場を迎え、妻は自殺未遂、尾行もばれて女子大生は男に詰め寄られ非難される。そうなるだろうな、という方向に物語が展開するのはとてもリアルではあるけれど、逆に言うと映画の物語として意外性はない。
そういう展開をどろどろしたものでなく、なぜか清潔な感じのする映像で見せてくれる。映画の中には冬の日の朝のような澄んだ空気が満ちていて、なぜか清々しい。物語も映像も無色透明であまり心に残る部分はない。

不倫をする男は長谷川博己で終始格好良い。この人はそんなに濃い顔をしていないけれどなんだか顔立ちが好きだ。立ち姿も格好良い。まあ浮気くらいするだろ。
長谷川博己の妻の役を演じているのが河井青葉。この人は『私の男』とか『愛しのアイリーン』に出ていてなぜか艶めかしく、正直言うと河井青葉さん目当てにこの映画を観始めたけれど殆ど顔も映らないような登場の仕方だった。非常に残念な映画と言わざるを得ない。