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2015年、米国、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督作

恋人と肉体関係を持った女子大生は、直後に彼によって薬で眠らされる。目が覚めると彼は「俺が感染したあるものを君に移した。以後、色んな人の形をして君を追い掛けてくる。死にたくなければ誰かと寝て相手に感染させろ」と言う。その後、恋人は姿をくらまし、彼女をそれが追い掛けてくる。

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セックスによって<何か>が伝染し、感染した者には様々な人の形をした<何か>が追い掛けてくる。感染させた者は追い掛けられることはなくなるが、移した相手が<何か>に殺されると、また誰かに移さない限り追い掛けられることになる。この映画の中で語られるのは、そういうルール。
その<何か>が、めっちゃ怖い。裸の中年女や男、老婆、異様に背の高い男などがゆっくりと歩いてこちらに近付いてくる絵面が恐い。

セックスによって伝染する<何か>が隠喩だとするなら性病のことではないかと思うけれど、監督はインタビューでそれを否定しているらしい。だとしたら何のことなのかよく分からない。

主人公の幼馴染の青年は、彼女から<何か>を移されることを受け入れる。それは自分が犠牲になって彼女を守ろうとすることであって、彼が彼女に好意を持っているから為せることでもある。愛情とそれによる自己犠牲を描いているのか。

けれど彼は、自分が引き継いだ<何か>をコールガールに伝染させる。この場面ははっきり描かれないが、そう思える場面がある。その後、彼と彼女は仲良く手をつないで歩く場面があることから<何か>から開放されたということだろう。自分より弱い者にクソを押しつけて自分達だけは恵まれた生活を手に入れるという苦い結末でもあるだろう。

しかしそんな色々を憶測しても仕方ない気がする。恐怖映画なので恐怖を観客に与えればそれで映画としては機能を充たしているのだから。作家が映画に込めた何かが判明しなくてもどうでも良いかもしれない。映画の間、不気味な<何か>に不安と恐怖を持つその時間を楽しめば良いだけではないかとも思う。そう思えば、最高に機能的な映画だと言える。

映像が鮮明で、その美しさも不安を高ぶらせるのに一役買っている。音楽もまた独特で奇妙な味わいがある映画でした。