グランツーリスモ

2023年、米国、ニール・ブロムカンプ監督

レーシング・シュミレーター・ゲーム『グランツーリスモ』の凄腕プレイヤーだった青年は、ゲームプレイヤーに本物のレーシング・カーを運転させるというプロジェクトに採用され、現実のレースで入賞を目指す。

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ニール・ブロムカンプの監督作を最初に観たのは『第9地区』だった。SF映画だけれど差別やそれによる社会の混沌が描かれていて世間的にも傑作として評価されていると思う。その後の『エリジウム』や『チャッピー』もSF映画でありながら社会性が込められていて、そして何よりアクション場面での外連味が凄いという魅力があった。
グランツーリスモ』も公開前からブロムカンプ監督作として楽しみにしていたけれど、今度はSF映画ではないというところで一抹の不安もあった。

映画を観ての感想は、よくできていて面白かったけれど今までのSF映画のときのような強い感動がないのがちょっと寂しい、という感じだろうか。

レースというのはスポーツカーが躍動するアクションなので、その場面にトキメキはある。市販車の最高峰である日産のGTRが幾数台も並んで走る場面は感動が確かにある。でもCGと実写の区別が見分けがつかなくて、どう思っていいのか分からない。実写なら実際に車を走らせて撮影しクラッシュ・シーンでは実車が破壊されたという驚きがあるだろうけれどCGにはそれがない。しかし実車とCGを見分けるために映画を観ているわけでもない。
トム・クルーズの一作目の『トップガン』では、戦闘機がどういう位置関係でいるのか分かりにくかったのが『トップガン:マーベリック』ではそれが整理されて分かりやすくなっていたように、レース場面での順位やライバルが前にいるのか後ろにいるのか、はたまた他の車との差は、みたいなのが分かりやすく描かれている工夫は感心した。ゲーム画面を模した感じで順位を表すのは親切設計。

でもね、ブロムカンプ映画の醍醐味は外連味なのよなあ。異星人のモビルスーツが弾薬をあり得ないくらいばらまくシーンとかAIを搭載したロボットが犯罪者集団を強襲する直前の倉庫の上に着陸する場面とか、そういう漫画みたいな、心が踊る場面があるのが魅力。この『グランツーリスモ』でもレース・シーンにそれがなかったわけではないけれど、「これ!」というほどの強烈な場面が無かった気がする。だから面白かったけれどブロムカンプ監督作としては物足りない。問答無用でアガる映像を見せてほしかった。結構、面白かったんだけどね。