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1963年、伊/仏、フェデリコ・フェリーニ監督作

温泉地で保養中の映画監督は、新作の制作に入ろうとするがアイデアも気力もないまま映画製作に巻き込まれていく。

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イタリア映画の巨匠と言われるフェリーニだけれど、その映画を観たことはなかったと思う。こういう古い名作をあまり観ていないのが自分としてはダメだと自覚しているのだが、ふと思い立って、というか、アマプラでもうすぐ見放題が終了、みたいな感じになっていたので「一応観ておくか」くらいの気持ちで鑑賞した。

最初は何が何だかよく分からない。監督と呼ばれる人物が出てきて「役が欲しい」という女が登場するから映画の話だろうかとぼんやり思うくらい。しかしよく分からない映画でも何故だか引き込まれる映画というものはある。初めてタルコフスキーの映画を観た時もそうだった。ハリウッド映画の脚本術にあるような、分かりやすい物語の発端は描かれないけれど、それでも映画の行く末が気になる。

観ていると映画制作の混乱とそれに纏わる人たちと映画監督の悩みが描かれた映画だということが分かってくる。しかし現実と夢や思い出の場面が境目なく続いていてずっと現実ではない夢想の世界にいるような気持ちになる。

1963年の映画でこのような手法はもう既にあるものだったのだろうか。当時、観た人であればこの映画の新しさを感じることができただろうが、それは今はもう分からない。ただ先進性は分からないまでも映画のリズムに乗せられて観ることはできるし、そのリズムは今でも十分面白い。タルコフスキー映画にあるような廃墟趣味も感じられる。そういえば『ノスタルジア』はイタリアで撮影されたのではなかっただろうか。

結局、映画制作は断念され、それでも監督はスッキリした気分になるという結末だったが、そういう解釈でいいのかどうかも分からない。この映画を観て面白いと思ったしセットやロケーションの美しさも曖昧で幻想的な雰囲気も好ましいと思えたから感想としてはそれでいいのかも知れないが、フェリーニの監督作としての位置づけや当時の受け止められ方など基本的な解説は読んでみたい。しかし検索してもそれらしいものは見つからなかった。
こういう映画の基礎教養的な作品の解説は何か書籍としてあればいいのに。