ヴァルハラ・ライジング

2009年、デンマーク・イギリス、ニコラス・ウィンディング・レフン監督作

中世のヨーロッパの何処か。囚われの男は殺伐とした土地で檻に入れられ奴隷同士で戦わされる為に生きていた。しかし、沐浴のための川底で矢じりを見つけたことからそれを武器に逆襲して奴隷の身から逃れることに成功する。
逃亡の最中にエルサレムを目指すキリスト教騎士団に編入させられるが、騎士団は海で迷ってしまい、たどり着いた土地にはキリスト教徒でない蛮族がいるらしかった。

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映画の中でまったく時代と場所の説明がない。現地住民の集落を破壊した無法者たちがキリスト教徒でエルサレムを目指していると語ることから十字軍の話なのかと推測できるくらい。
鑑賞後に解説を求めて検索してみると「北欧神話を背景にした」ということらしい。十字軍の時代に東欧や北欧へキリスト教に帰依しない人たちを成敗する為に十字軍が遠征していたらしいし、映画の中で描かれる土地も北欧っぽいと言われればそれっぽいけれど、映画の中ではエルサレムを目指していると言っていたから違うのかも知れない。セリフもナレーションも何の説明もないので分からないとしか言いようがない。

そんなよく分からない物語ではあるけれど殺伐とした無法の中世ヨーロッパ世界のムードは満点で、その雰囲気に酔う映画だと思う。最初に囚われの闘技奴隷だった男が主人公で、マッツ・ミケルセンが演じていて堪らなく格好良いし、アクションシーン、というか殺しの場面は荒々しくケレン味もあってて迫力がある。

それでもあまりに物語が希薄なのが気になる。タルコフスキー映画のような映像詩としての映画にするのならそれで良かったとも思うし、その素質は十分にあるのだけれど、如何せん中途半端な感じがある。

でも殺伐として無法な中世ヨーロッパの世界を描いていて、それでいてファンタジーのような甘いものではなく、苦く厳しい世界が堪能できるので嫌いじゃない。でも、もうちょっとなんとかならんかったのかという感じがあって、嫌いになれないけれど惜しいと思わずにはいられない。

監督のニコラス・ウィンディング・レフンはこの後にライアン・ゴズリング主演の名作『ドライブ』を監督するので、この『ヴァルハラ・ライジング』からグッと進化したということなのだろう。
ヴァルハラ・ライジング2』とかやればいいのに。