ヘレディタリー 継承

2018年、米国、アリ・アスター監督作

ミニチュア造形作家の女は母が亡くなっても悲しくなかった。夫と息子も同様だったが娘だけは祖母になついていた。しかし娘は不運な自動車事故によって亡くなってしまう。そして自動車を運転していたことで罪を感じた息子は塞ぎ込んでしまう。
女は悲しみを癒やすために降霊術に手を出してしまうが、その後一家には不思議な出来事が起こるようになる。

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『ミッドサマー』のアリ・アスター監督作だけれど、この『ヘレディタリー 継承』が長編監督第一作らしい。よく一作目でこんな風格のある映画を撮れるものだなと感心する。

一家には謎がある。亡くなった母親とその親族には精神病者が数人いたということが語られるので娘である女にもその気質が継承されているのではないかということを思いながら観るのだけれど、別のことが継承されていくという物語の結末になっていた。

この映画も最初の30分ほどは何も起こらない。しかしいきなりショッキングで目を塞ぎたくなるような事件が起きて、以降は不運と恐怖に大きく転がっていく。
一応の謎が提示されて結末でそれが明かされるけれど、ふーん、そうだったんですね、くらいの感じでもある。オカルトにあまり怖さを感じないので。オカルトを熱狂的に信じてしまう人間の愚かさはとても怖いけれど。

自主的夏の恐怖映画祭りと題して自主的にホラー映画を続けて観ているが、観ているとホラー映画というのは見慣れたハリウッド映画などとは作りが違うのだなと感じる。
事件が起こってそれを解決するためのアクションや謎解きがあって、その結末も二転三転する、そのような観客を楽しませるために色んな要素を詰め込んだ豪華な映画を見慣れた身には、恐怖だけに特化した映画というのは物語の起伏が少なくて内容が薄いように感じてしまう。豪華で贅沢なものに慣れすぎていてシンプルな映画に物足りなく感じてしまうようだ。
でも、ホラー映画では、盛り上がるシーンが矢継ぎ早に展開されるということよりも映画の中で印象的なショッキングシーンが数度あればそれで十分なのだとも言える。映画ってそういうものではないか、そういうものだったのではないかと思い直したりする。

ショッキングなシーンは、この映画にはかなりある。そういう意味で十分に楽しい映画だった。