大阪/岸政彦 柴崎友香 著

大阪について

大阪

大阪

社会学者で小説家の岸政彦さんと小説家の共著による大阪についての随筆。岸さんは中部のご出身なようで大学から関西に来られて、今も関西の大学で先生をしておられる。柴崎さんは大正区で育って子供の頃から大阪だけれど今は東京にいる方、なので本の帯に「大阪に来た人、大阪を出た人。」とあるのはお二人の立ち位置を表している。

面白かった。大阪というのはどんな街かというと、一言では言い表せなくて、それは結構な都会であるからそこで暮らし働いた人の数だけ街の印象があるから。そんな一言で言い表すような雑なことはできない。
この本では著者二人の見聞きした大阪が描写されている。そういう風に街を語るのには自分が見て経験したことを記録するしかない。街の表情は多面的で、どの面に自分が接するかで印象は変る。良い思い出が多ければ良い街になるだろうし、辛い出来事ばかりの記憶が残ればその街を嫌いになるだろう。街を語るということはそういうことだと思う。

関西のテレビが発信する芸人の語るコテコテのたこ焼きとお好み焼きの街だけが大阪ではない。当たり前だけれど。でもテレビの発信力というのは力強いし、逆にそのイメージに自分から寄せていってしまう人も大勢いる。そんなステレオタイプにわざわざハマりにいかなくても、と思うけれど。