英国で保育士として働く女性による、労働者階級の目線から見た現代の英国、ヨーロッパの政治状況を語る一冊。

ヨーロッパ・コーリング――地べたからのポリティカル・レポート
- 作者: ブレイディみかこ
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/06/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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英国では福祉の切り捨てと弱者に対する助成の削減といった緊縮政策が採られており、右翼政党の台頭とそれに抵抗する勢力といった構図があるようで、他国のことだと思えない状況です。
英国にはNHS(国民保健サービス)と呼ばれる原則無料の医療制度があるのですが、これを緊縮政策の流れで解体するか否かという攻防があるということが書かれています。NHS創設の理念を象徴する当時の大臣の言葉を引用すると
病気とは、人々が金銭を払ってする道楽ではないし、罰金を払わねばならぬ犯罪でもない。それは共同体がコストを分担するべき災難である
とあります。最近炎上したあの人に聞かせたいような言葉です。
人間誰しも弱っている時は人に優しくする余裕がない。それが国家規模で起こっているのが今の状況じゃないでしょうか。経済が停滞し、財政が圧迫されて弱者に対する福祉や助成が切り捨てられていく。弱っている時は弱者に優しくなんてしてられないということだと思います。
そういうのって動物的なんですよね。野生や本能に従順だと言ってもいいと思う。
財政が福祉予算で圧迫されている、経済は低迷している、ならば福祉を切り捨てよう、なんて最も単純な思考でしかない。強い者が生き残り弱い者は淘汰されるという弱肉強食の動物的世界に回帰している。弱者も含めて共存していく方策をとるのが人間的なのじゃないでしょうかね。
概ね右派と言われる人たちの主張って本能に従ってると思う。それがゆえに支持されるというところもあると思う。
差別的感情を隠さない、弱者に自己責任を押し付ける、軍事力を増強して存在感を増す、競争に参加できないのは努力してないからだ、どれもこれも感性が起動してそれを包み隠していない。感性がそう反応しても理性的に考えればそれは言うべきことじゃないことが分かるはずなのにコントロールできていない。しかしそのノーコントロールな状態を本音で語っていると捉える人がいる。本音だけで語ってちゃだめなんですよ。理性で制御しないと。人間なんだから。
てなことを考えました。