人生はシネマティック

2017年、英国、ロネ・シェルフィグ監督作

ドイツ軍による空爆が行われていた1940年の英国・ロンドン。売れない画家の妻は、英国情報省に仕事を得たが、そこは戦意高揚の為の映画を製作する部門で脚本を執筆することになる。その映画とは、フランスから英国軍が撤退したダンケルク撤退を映画化しようとするものだった。

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英国映画というのはなぜこんなにも愛らしいのか。米国の大作映画を見慣れている身にはそう思える。
戦時下のプロパンダ映画の製作なんていう重々しいテーマをこんなに軽やかに描けるなんてイギリスが羨ましい。日本で同じ映画を作ったらどんなに批判を浴びるだろうか。

映画の中の映画、映画を製作する映画というのは、よくある話であって、近作なら『カメラを止めるな』もそういう映画だった。ウェス・アンダーソンの『ライフ・アクアティック』だってそうだし、深作欣二の『蒲田行進曲』だってそう。だって映画を作ってる人たちは映画について語りたいはずだから。

この映画は、映画製作でも脚本家が主人公。色んなところから横やり、トラブルがあって脚本を修正しなければならなくなる顛末がドタバタして楽しい。船のエンジンがトラブルを起こすという筋書きには、運輸省から「英国製のエンジンに不信感を与える」とか、役者がもう戦場に行ってしまって追加撮影ができないとか。その中でなんとか映画を形あるものにしようと奮闘する脚本家チームが涙ぐましいけれど可笑しい。

主人公は女性でチーム内からその力量が買われて活躍するが、夫との関係や新たな恋やそれが戦争によって破れたりと恋愛ロマンスの内容も盛り込んでる。英国製ロマンチック・コメディといえば『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ラブ・アクチュアリー』なんかの定番があって、その実力が大いに発揮されてる。でも監督はデンマーク出身の女性監督みたいだけど。ちなみに、『ラブ・アクチュアリー』にも出演していた英国の俳優ビル・ナイが本作でも良い味を出してる。

女性が男と同様に、もしくはそれ以上に活躍するという女性映画でもある。監督が女性監督だというのもあるのかしらん。

高校生の時は映画研究部で映画を撮ったりしていたので映画作りのお話はとても好きだ。自分の記憶は文化祭に向けた祭りの準備的なノスタルジーに彩られているし、本物の映画製作とは比べ物にならないのは充分分かっているつもりだけれど、でも映画を作ることの高揚感というのはほんの少しでも知っているつもり。
ただ、映画製作のお話というのは、あるプロジェクトを推進する過程に様々な障害があるというお話なので、昔の『黒部の太陽』なんてのもダム建設の物語だから、共通する部分はあると思う。でも最近の邦画にある企業ものっていうのは社内の派閥がなんとかみたいなのばかりじゃないかしらん。もっと他に描き方があるのじゃないかしらん。