Stag Fight/RICHARD RAMIREZ

US、ヒューストンのRICHARD RAMIREZによるノイズ・ミュージック作品。

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Black Leather Jesusの名前でも活動している男で、公式Webを見るとプロフィールには
“American queer noise artist.”
と書かれている。他の場所では“openly gay”と紹介されていたので、同性愛者であることを公表しているということだろう。確かにカセットのジャケット写真も男の裸である。
queer」というのは侮蔑的に「オカマ」みたいな言葉だと思うけれど、奇妙なという意味もあるのでノイズ・ミュージシャンには掛け詞として言い得て妙な表現だと思うし、侮蔑語を逆手にとって表現に用いるというのはノイズ的だとも思う。アメリカというのは同性愛者に比較的理解がある印象があるけれども、マイノリティとして差別や偏見を持たれるということがこの少ない言葉でも想像出来る。

ノイズ・ミュージックが好きだということをリアルではことさら主張しないのだけれど、音楽マニアだと主張する人に訊かれれば答えはする。大体は「?」みたいな反応だが、時には嫌悪感を持って反応される。最近は非常階段のアイドルとのコラボや大友良英氏の活躍などでノイズ・ミュージックというものが認知されてきてはいるようなので違うかもしれないが、「なんでそんなものを聴くのだ」とか「まともだと思えない」という反感を受けることもあった。

音楽の尊さ、表現の公平さ、みたいなことを口にする人間がノイズに出会った時にあからさまな侮蔑の感情を表すのは見ていて面白い。彼等が認めているのは所詮彼等が思う美しい表現であって、美しくないものを表現することを表現とはみなしていない。そして自分が理解できるものには公平を喫すが、それ以外には感情が反応してノイズというものを蔑む。そこには蔑視という感情が心の中にあることを示している。

別にね、嫌いなのはいいんですよ。それは個人の好みだから。俺だって他人が良いと思う作品に接して何の感情も湧き起こらないということはあるのだから。ただ音楽的表現の一形態を侮蔑したり、それを好きな人間を蔑んだりするのは、あんた達いつも言ってる事と違うんじゃない?ってことなんです。
たかが音楽のジャンルであってつまらない事だが、それでも少数派の側に立ってみると口だけで公平を謳う人間はよく分かる。

音は内省的なフィードバックノイズ。