解剖台の上でのミシンと蝙蝠傘の偶発的出会い/NURSE WITH WOUND

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ノイズ・ミュージックのクラシックは幾つもあるだろうが、NURSE WITH WOUND(NWW)による1979年リリースの本作もその中の一枚。怒涛のハーシュ・ノイズというような代物ではない。まだ時代はそこまで到達していない。

ノイズ成分よりもサウンド・コラージュのような面が目を引く。音のコラージュ作品自体は、それ以前からあるが、その出自と不穏な雰囲気を醸し出す作品世界がノイズの始祖のひとつだという事に異論はないと思う。

名盤とされるような昔のアルバムを聴いてピンとこないことはある。一方、随分昔の盤なのに今聴いても面白いと思うものもある。前者はその時代に聴いていれば先進性が感じられたのだろうけれど、時間が経ってからでは、新しさは古さに反転してしまっているので、歴史的意義を意識しながら聴くことになる。でもこのNWWのアルバムは後者。今聴いても時代性抜きにして面白い。

音のコラージュ作品でも当然、面白いものとそうでないものがある。自分で色んな音源を重ねたり切ったり貼ったりしてみると分かるが、編集の妙によって格好良い音になっているところと、ただ単に編集された痕跡だとしか思えない場所がある。その違いは何なのかは良く分からないけれど本作は確実に前者が詰まっている。

なぜそういうコラージュのようなものが好きなのかよく自分でも分からない。子供の頃にカセットテープでそういうことをして遊んでいたからだろうか。その頃にやっていたのは、好きな歌謡曲の一番聴きたいサビだけが続くテープを作ったりしていたが、編集することによって元の音楽の良さとは違う、なんだかよく分からない格好良さが生まれる瞬間があって、そういうのが楽しくてずっとそんなことをして遊んでいた。そういう経験があるからだろうか。
しかし、写真のコラージュもなんだか好きでいて、昔観たキムラカメラの写真集などは未だに記憶に残っている。なんだか歪な感じがするからだろうか。よく分からない。

1980年前後というのは、75年にThrobbing Gristleが生まれ、77年には彼等の1stアルバムがリリースされている。そして、80年にはWHITEHOUSEの『birthdeath experience』がリリースされる。日本では79年にはメルツバウが生まれ、非常階段が結成されている時代であり、ノイズやインダストリアルといったジャンルの音楽には重要な時代だと言わざるを得ない。

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