野火
1959年、日本、市川崑監督作
太平洋戦争のフィリピン戦線で生き残ろうとする兵士の物語。
www.youtube.com
今夏、塚本晋也監督作の『野火』を観てとても良かったので、市川崑版も観てみました。
塚本版はジャングルの緑が圧倒的で飲みこまれそうな色彩だったのですが、本作はモノクロ映画なので、少し違う。印象に残るのは緑よりも緑のない景色を歩くシーンで、荒地を彷徨うような茫漠とした印象を持った。
物語は原作が同じなので比べるべくもないけれど、残酷描写と人間の嫌らしさは塚本版の方が強烈に描いていると思う。
広大な自然の中でぽつねんと兵士が立ちすくむシーンなど塚本版でも観られた場面があり、本作がなければ塚本版の『野火』も生まれなかったと感じさせます。
モノクロ映画は色合いという情報が与えられないわけだけど、その点光と影のコントラストが美しく心に残る。珠に観ると新鮮です。