2025年、米国。ポール・トーマス・アンダーソン監督作
反体制活動家だった男は、同じグループの女性と惹かれ合い一女をもうけた。男は娘を育てることを優先したが、妻は活動に身を捧げるべく家を出ていった。16年後、男は非合法活動からは身を引き自堕落な父親になっていたが、娘は立派に育っていた。しかし16年前の因縁から、ある軍人が娘を誘拐しようとし、男は娘を助けるために再び戦いに身を投じていく。
逃走劇で追跡劇、群像劇でもありディカプリオとベニチオ・デル・トロ、二人のバディ物でもある。そしてアクション映画でもありつつ結構な喜劇でもあって、白人至上主義や移民問題を描いていたりする社会派の物語だったりと色んな要素の詰まった作品。
2時間50分と少し長い映画だけれど、観ている間にその長さを感じることはなく、一瞬で終わってしまったかのようにハラハラドキドキさせられた。
そしてディカプリオ演じる元革命家の父親のダメっぷりが素晴らしくて随所で笑わせられる。特にかつての仲間に連絡をとろうとして「合言葉を言え」と言われるのだが、「覚えてるわけないだろ!」とブチ切れするところなどは最高だった。
マーティン・スコセッシ監督作の『キラーズ。オブ・ザ・フラワームーン』でもディカプリオは、かなりのダメ人間を演じていたが、そういう境地なのだろうか。とにかく怪演だった。
ディカプリオを追う軍人を演じるのはショーン・ペン。彼は「クリスマスの冒険者」という白人至上主義者たちの秘密結社に入会したいがためにディカプリオと娘を追うのだけれど、「クリスマスの冒険者」というネーミングは笑わせようとしているとしか思えない。正直言ってダサすぎる。
PTAの映画では『ブギーナイツ』と『マグノリア』が大好きだけれど、どちらも群像劇。そして本作も出てくるキャラクターが誰も彼も濃い群像劇だった。PTAの映画では『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『ザ・マスター』といったシリアスな大作はイマイチのれなかったけれど、この映画は観ている間ノリノリの傑作だった。
少し分からなかったのは、ショーン・ペンが娘を捕らえて賞金稼ぎにその身柄を引き渡して、ある場所に連れて行くように命じるが、あれがどういう場所なのかよく分からなかった。また、賞金稼ぎはそこにいる軍人たちを殺してしまうのだが、そこもよく分からなかった。賞金稼ぎはショーン・ペンに娘を殺すように命じられるが「ガキは殺らない」と言っていたから彼女を守ったのだろうか。
と、小さな疑問はあるもののノンストップで見られる娯楽作で非常に楽しい映画でした。が、今のアメリカの様子を見ていると、映画『シビル・ウォー』のようなことが実際に起きるのではないかと思ったりするのだけれど、トランプ政権が更に独裁政権的な様相を帯びれば、この『ワン・バトル・アフター・アナザー』に登場するような非合法の反体制組織が出てきてもおかしくないという感想もあって、構想や撮影がいつ頃なのかは知らないけれど、結構今のアメリカを描いた社会派の映画でもありました。
スマホのアプリで映画の鑑賞記録を見ると昨年の秋に『シビル・ウォー』を見たきりで、今日『ワン・バトル・アフター・アナザー』を観るまで映画館では勿論、サブスクや手持ちのDVDでも一本の映画も見ておらず、一冊の本も読んでいない。長い鬱で全く何をするにも気力が湧いて来ず無気力に過ごした一年だったが、鬱を脱しつつあるのを感じる。何より映画を観て感情が動くことの喜びがあった。