ボーダーライン

2016年、米国、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作

誘拐事犯専任のFBI女性捜査官は、誘拐事件の根源であるメキシコ麻薬カルテルの大元を検挙したいことから国防総省の活動に出向することになる。しかし、傍観者として参加させられるだけでしかない。やがて彼女は同行する謎の南米人と共に危険な犯罪捜査に巻き込まれて行く。

www.youtube.com

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『メッセージ』、『ブレードランナー2049』と観てきたが、それ以前の作品を観ていない。ということで観賞した本作ですがヴィルヌーブ作品の静けさというものが既定のものだという感じがした。とても静かなアメリカ映画だった。音楽や音響の問題だけでなく間の取り方みたいな感じだろうか。兎に角静か。でもそれは派手なハリウッド作に慣れた気分がそう言わせるのかも知れない。現実の世界は日常の行動のバックに派手なBGMとか流れないから。

構造が少し変わっていて、主人公として設定されているのはエミリー・ブラントが演じる女性FBI捜査官であるが、本当の主人公はベニチオ・デル・トロ演じる謎の南米人だと言っていい。エミリー・ブラントは終始、蚊帳の外で捜査に同行している立ち場でしかない。なぜその立ち位置であるのかも映画の中で明かされるけれど、観客は傍観者の目を通して映画の物語を追うという構造になっていて、少し変わった視点から物語を観察することになる。映画でも小説でも物語の新規性ではなく、構造の新規性を見せてくれるものはとても面白い。漫才だとジャルジャルとか。

傍観者を通して観客は物語を追うことになるけれど、最後には辻褄が合い、納得することになる。とても整合性がとれている。ほころびがない。そう思うと『ブレードランナー2049』で完璧な続編を作ったのもそういうことなのかなとも思う。

まだまだヴィルヌーブ作品は観てみたい。