ニッポンの音楽/佐々木敦 著
先般読んだ演歌の歴史が興味深く、日本の歌謡史みたいな本が面白いと分かったので続けて読んでみた。
J-POPと言われる前と後、日本のポピュラー音楽がどんな変遷を辿ったのか概観する本。
時代を象徴する音楽家達をチョイスしてその流れを語る。その音楽家たちは
70年代:はっぴいえんど
80年代:YMO
90年代:渋谷系、小室哲哉
00年代:中田ヤスタカ
で、結論は
70年代:遠いアメリカの音楽を日本なりに解釈した音楽
80年代:国外との距離が縮む。外国のトレンドとリンクし始めた音楽。
90年代:小さい時間差で外国の音楽が入手できてそれを咀嚼した音楽。
00年代:ネットの普及。外国との時間差がなくなった音楽。
という流れではないかというのが著者の意見。なるほど。
洋楽に対しての距離が縮まってきたという見方なので、英米の音楽に対しての評価軸なんだと思う。でも英米に限らず聴いてる人はロシアのパンクもアル ゼンチンのギターインストもアラビアンポップスも聴いてる。著者くらいの人ならその点は御存知だけど、本書では語られてないという話ではあると思う。
それと関連して、中田ヤスタカの発言の部分が面白かったので引用すると
“好きな曲を探してまで聴く人って多くないですよね。やっぱり偶然聴いた音楽の中からいいなと思ったものを選んでいるわけで、自分から音楽に向かっていくという文化は音楽ファン以外は持っていない”
とある。
“音楽に向かっていく”というのは能動的に音楽を探す行為だと思うけど、これは本当にそう思う。
ラジオやテレビ、その他の宣伝をフルに使ってプロモーションされたものなんて与えられた餌のように思ってしまう。そうじゃないものを聴きたい。かといって 大資本が介入していないというだけで、マイナーなものであっても商業ではある。でも、そんなことはどうでもいい。寧ろそれにお金を出すことは演者にお金を 払って支えてるわけだから。
自分の場合は2月に見たアジアの実験音楽家たちのライブが大きくて、アジアのアヴァンギャルドに目が開かれた。でも探しようがないんよね。どう探し たらいいか分からない。SoundCloudで見つけた人は聴いてるくらい。習性で音盤が欲しいと思うけれど、どこで売ってるのか、そもそも出してるのか も分からない。探す能力が低いんだと思う。
今までは欧米を中心とした音楽の最新動向を取り入れて消化する速度がセンスだったものが、他の場所にも面白いものがあって、それを探し出して咀嚼す ることが出来る能力みたいな感じになるんじゃないか、既にそういうものはあったけど更に広がるんじゃないか、と思う。ネットで探すわけだけど、ネットって 取っ掛かりがないところには辿りつけないのでそこら辺のアンテナをどう張ってキャッチしていくかというところではないかな、と思ったりする。
で、そういうものが国内に取り込まれて発酵したものがJ-POPの独自性みたいなものになるんじゃないかなあ、とそんな感じのことを考えました。