ダンケルク

2017年、米国、クリストファー・ノーラン監督作

第二次大戦下、ドイツ軍の侵攻によりフランスのダンケルク海岸には40万人の英仏軍が追い詰められ包囲されていた。英国は兵士たちを母国に撤退させようと試み民間船までも動員する。

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良い。とても良い映画。全ての映像が広がりを感じさせて美しい。青い海と青い空がどこまでも広がっていて、そこを人間は船や飛行機といった機械を頼りにしなければ渡れないという絶望感が広がっている。そして音楽がそれをしっかりと映像を補強している。

この映画ではそこに登場する人物の行動しか描かれていない。海岸に追い詰められて撤退船を待つ兵士、その海岸の空を守るパイロット、そして兵士たちを迎えに行く民間船の乗員、彼等の行動しか描かれていない。凡百の映画なら合間に彼等を心配する家族や帰還を待つ恋人といったものを描くのだろうが、それらは描かれない。とても非演歌的である。
そのことを物足りないとかドラマがないといった感想もあるようだが、その硬質さが良い。ハードコアだといっていい。

撤退船を待つ兵士、その撤退船を采配する将校、空軍のパイロット、兵士を迎えに行く民間船の乗員、彼等の群像劇であるけれど、彼等はそれぞれのピンチ、苦難に出くわす。その連続で映画は構成されていて情にまみれた事情といったものは描かれていない。この構成は何だろうと思ったがよく考えると『MAD MAX FURY ROAD』のような映画だと思った。
ただそこで行われている事象だけを描いてそのバックストーリーは描かないけれど滲み出る情感がある。『MAD MAX FURY ROAD』もハードコアだったから。

Hidden Figures

2017年、米国、セオドア・メルフィ監督作

1960年代、コンピューター普及以前のNASAでは宇宙飛行の為の複雑な技術計算を黒人女性たちが手計算で行っていた。彼女たちは皆天才と言ってよい頭脳の持ち主だったが黒人であること、女性であることから正当な地位を与えられていなかった。
そんな環境の中、3人の黒人女性たちは、それぞれ学問の知識を活かして軌道計算に、技術者に、そして初期のコンピューターのプログラマとなっていく。が、黒人女性である彼女たちには数々の試練が待ち構えていた。

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映画でも漫画でもキメのシーンというものがあって、アクションものなら壮絶なアクションを決めた後の主人公の姿だったり、ヒーローものなら敵を倒した後のヒーローの立ち姿だったり、はたまた恋愛映画でも叶わぬ恋が成就した瞬間などがキメのシーンとして印象に残るものです。そういうものがバシッと決まっていると格好良い引き締まった映画になる。
この映画のキメのシーンはと言えば、計算のスペシャリストの女性が難解な軌道計算を解いてしまう、とか、技術者になる為に白人専用の学校に入学を許される場面とか、計算係のリーダーがIBMの大型コンピュータを独学でマスターした知識で動かしてしまう、といったものです。文章で起こすととても地味なのだけれど、それがどれもこれもキマッている。そこに辿り着くまでには、彼女たちが黒人であること、女性であることで理不尽な待遇を強いられるという経緯が描かれるから余計にぐっとくる。もうどの場面でも拍手喝采したくなる。ちょっと泣いてもうた。

黒人差別、女性差別を描いた映画だけれど、彼女たちが科学と技術というものを武器にした時に、差別なんて下らないと思わせる科学技術礼賛の映画でもあると思う。凄い感動作でした。音楽もファンキーで最高のブラックムービー。

最初、邦題が『ドリーム 私たちのアポロ計画』であったものが、アポロ計画を描いた映画ではないという指摘があり、『ドリーム』に変更された本作ですが、どっちの邦題もクソダサいので記事のタイトルは原題の『Hidden Figures』としました。

散歩する侵略者

2017年、日本、黒沢清監督作
失踪した夫が見つかったが別人のようになっていて奇妙な行動ばかりで妻は困り果てた。そして夫は自分が宇宙人で地球を侵略しに来たという。
一方、若い男女の体に乗り移った二人の宇宙人はジャーナリストを名乗る男を案内役に殺人を犯しながら着々と地球侵略の仕事を進める。

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久々にわけの分からない映画を観た。
以前、映画館でこの映画の予告編を見たけれどそれほど食指が動くということはなかった。なぜそんな映画を観に行ったかというと凄く暇だったから。それと単なる気紛れ。黒沢清映画のファンというのでもないので。

ホラーではないと思う。だって全然恐くないから。
コメディーかも知れない。でも全く笑えない。
SF映画かも知れないが、心躍るSF魂は感じない。
夫婦の愛を描いた恋愛映画かも知れない。でもなんだかなー。
「言葉」の信憑性に疑義を申し立てるということかも知れない。でも中途半端な感じ。
そういうもの全部が込められてるのかも知れない。そうなのかなー。

最終的に宇宙人である夫は妻から「愛」という概念を受け取り、結果的に宇宙人は侵略を止めてしまう。そんな「愛は地球を救う」みたいなお話に今時感動する人いるだろうか。ちょっと理解できない。

長谷川博巳が演じる胡散臭いジャーナリストがやけっぱちになるところは「もっとやってまえ」と一瞬だけテンションが上がりました。