人間機械論/ノーバート・ウィーナー 著
サイバネティックスの提唱者ウィーナーによる機械、人間、通信に関する考察
一語一句噛みしめて読んでいかないとおいてけぼりをくらう集中力の要る読書でした。付箋だらけになった本書から少し引用すると
“国家の場合であれ、大学や会社の場合であれ、上から下への命令の流れだけでなく、両方向的な通信の流れをつくっていかなければならない
-中略-
劇場での観衆の拍手喝采-これは本質的に重要なことだが-、これは俳優の心に観衆との間の両方向通信をわずかに保証するものなのである。”
フィードバック制御に関連する記述だが、これを『社会的フィードバック』と称していてなるほどなと思った。拍手を通信としているところも確かに感情を伝えているのだから通信なんだなと。会話や拍手のような身近なものを通信と考えたことはなかったので。
機 械制御におけるフィードバックで言えば、制御が適正であれば振幅の大小はあれど出力が安定する方向に向かう。引用した俳優の例えでいくなら、俳優は拍手の 大小というフィードバックで自身の演技の良否を判定し次回の演技に生かすということになるんだろう。観客に人気のある演技に落ち着くというところだろう か。
SNSでのフィードバックはどのように働くのだろう。FBなんかで何処に行った何を食べた楽しかったという話題を多く見掛けるということを聞くのはフィードバックによる収束が起こっている状態ではないだろうか。ココでもそういう現象が起こるのだろうか。
というような事を色々と考えてしまう本でした。
あ と、本書の原題は『人間の人間的な利用』(THE HUMAN USE OF HUMAN BEINGS)。これを『人間機械論』と称するのは少し盛り過ぎではないでしょうか。「人間は有機物でできた機械である」くらいのことが書かれてるのでは ないかと少し期待してしまいました。