ひみつ/スカート

 

ひみつ [KCZK-005]

ひみつ [KCZK-005]

  • アーティスト:スカート
  • 出版社/メーカー: カチュカ・サウンズ
  • 発売日: 2013/03/03
  • メディア: CD
 

澤部渡によるスカート、2013年のインディー盤。
最初に聴いた時には「なんだか物足りない気がする」という感想だったけれど、何度も聴いている内にどの楽曲も好きになってくる。不思議。
ロックというよりポップス、それも良質の。何度もしがんで味が出るタイプの。

お気に入りの盤はスマホに取り込んでおきたいがiTunesが全くいうこときいてくれない。なんなん?

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パラサイト 半地下の家族

2020年、韓国、ポン・ジュノ監督作

半地下の部屋に住む家族は、内職くらいの仕事しかなく貧しい生活を送っていた。長男が裕福な一家の家庭教師に経歴を偽って採用されたことから、妹は美術の家庭教師、父親は運転手、母親は家政婦になって潜り込むことになる。

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冒頭からは、金持ち一家に嘘をついて仕事を得る貧乏家族の話として可笑しいが、中盤から一転して恐ろしい話になって<パラサイト>という映画のタイトルが現すように寄生の話になる。それ以上はネタバレになるから書けないけれど。

中盤の大雨の場面がとても美しい。金持ちの家から逃げ出す貧乏家族の面々が、山の手の高級住宅地から低地の貧民街まで坂を階段を掛け下る。それと一緒に雨水は低地に流れ半地下の家は水浸しになる。雨と濁った水と貧しい街並みが美しくて、美麗なものだけが美しいわけではないことを知らしめている。セット撮影らしいが、町が飲み込まれるような迫力があった。そして丘の上では何の影響もないというところに歴然とした貧富の差が表現されていると思う。

韓国映画はごちゃごちゃした街並みの場面にとても郷愁を感じる部分があるなあと思いました。

スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け

2019年、米国、J・J・エイブラムス監督作

スターウォーズ9作目

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これでスターウォーズ・シリーズは終わりなのでしょうか。一応終わりっぽいけどディズニーは、新たなお話で新作を作るとか作らないとか番外編みたいなのもやるとかやらないとか、ネットのどこかで見たような読んだような気もするけど、一作目から続いた物語は一旦終わりみたいですね。

観ている間思ったのは、このシリーズに思い入れの強い人たちも沢山いるけれど自分はそうじゃないなと。だってルークがどうなろうがレイアが死のうがあんまりそこに「わぁ死んでもうた」みたいな驚きとか悲しみとかはないから。「あぁ死なはった」みたいな。あまり物語の部分には期待していないというか。誰かさんはあの人の子供だったとか孫だったとか言われても「へーそうなんや」くらいの感情の起伏しか生まれない。元々RPGとかでも「お前は百姓の息子ではなく王家の血をひく者だったのじゃ」みたいな展開は「ケッ、最後はやっぱり血統主義かよ」とか思ってしまうから。

やっぱりこの映画に求めてたのは、星間戦争という壮大なファンタジーの中で驚くような映像を提示して欲しかった、ということに尽きると思う。最初の3部作では宇宙船や四本足で歩くAT-AT、森の中を飛ぶスピーダーバイクみたいなのはメカ的に格好良かったし、映像として斬新だった。宇宙船とモンスターが出てくる映画は大好きだから。
でもそういうのも現代のCG技術が発達した映画を沢山観ている我々にはもう目新しくなくて見飽きてしまったのだろうなと思う。食傷気味。

一応全作観てるはずだけど、そんなあまり愛のない感想です。もっと驚くようなビジョンが観たかった。

テッド・バンディ

2019年、米国、ジョー・バリンジャー監督作

稀代の連続殺人鬼、テッド・バンディの逮捕から、自分で自分を弁護した法廷闘争までを描く実録映画。

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有名なシリアル・キラーであるテッド・バンディは、逮捕後の裁判でも弁護士のように振る舞い自分を弁護していて、その劇場的な振る舞いからも人気になった。その顛末が描かれている。

しかしこの映画は何を描いたのかよく分からない。実際にバンディが法廷で道化のように振る舞った記録映像もあって、それを焼き直したようにしか思えないし、終始無実を主張するバンディの姿しか描かれないから観客には本当に無実の人ではないのだろうかとさえ思えてくる。
この映画を観に行こうと観客が思う動機には「あのテッド・バンディの映画」というものがあると思うが、それはバンディのやったことを既に知っているということであって、その前提となる知識が必要な映画だと思う。バンディのことを知らなければ何も伝わるものはないのではないだろうか。そう思うのには、あまりテッド・バンディについては詳しくなかったからなのです。詳しくない人間にすれば「へーこんなことがあったんですね」という実録映画以上の感想は持てなかったから。
ちなみに最悪の連続殺人鬼は、ヘンリー・リー・ルーカスだと思ってます。

許永中

2冊の本を読みました。 

海峡に立つ:泥と血の我が半生

海峡に立つ:泥と血の我が半生

  • 作者:許 永中
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 単行本
 

 

許永中 日本の闇を背負い続けた男

許永中 日本の闇を背負い続けた男

  • 作者:森 功
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/12/11
  • メディア: 単行本
 

 

90年代初頭に発覚した巨額経済事件であるイトマン事件で、その中心的な役割を演じた男が許永中です。氏は、大阪中津に在日韓国人の二世として生れ、荒くれ者の青年時代を過ごした後、様々な事業を起こし、結果的にイトマン事件で逮捕されます。保釈中に逃走するも再逮捕され、韓国で刑期を終えた後、今は韓国にいます。

1冊目の『海峡に立つ 泥と血の我が半生』は許永中本人による自伝。これを読んでいると暴力団関係者の名前が頻繁に出てくる。許永中自身はどこの暴力団にも加わっていないということだが、大物ヤクザたちと知己を得、交流していることが分かる。自伝では、暴力団の大物をバックにして何かを為したということは書かれていないが、彼等の人脈や情報、そしてバックに暴力団がいるという威勢を借りて様々な仕事をやり遂げているのだろうと想像できる。イトマン事件については絵画を通した融資であって何も悪い事はしていないという主張になっているが、自伝で自分を悪く言う人はいないのだからそういうものだろうと思う。

2冊目の『許永中 日本の闇を背負い続けた男』はノンフィクション・ライターによって許永中の人物像とその活動履歴を浮き彫りにする本。許が様々な会社を売買したり、同和関係の仕事で収益をあげていったことなどが描かれている。大きな資金をバックに経済的な揉め事を解決する剛腕のフィクサーとして暗躍していった事が描かれ、イトマン事件についても美術品を担保に商社から法外な資金を提供させていたことなどが描かれている。

両方の本を読んで、著名な政治家や経済人の名前が沢山出てきて、そこで暗躍する人たちが蠢いているのが分かる。お金の匂いのするところにこういう人たちは群がるのだと言う事が分かってうんざりする。
許永中自身は青年時代から番長気質の人がそのまま大人になっていった印象があって、表舞台に立つことなく陰で暗躍することに美学を持っていたようだが、それも実利を得られることが前提の上だろう。

登場する人物が皆、金が至上の目的でそれを得ることが力になるという考えの人ばかり。許永中で言えば幼い頃からごんたで腕力では誰にも負けない育ち方をしたから大人になって更に力を得ようとすればそれはやはり金なのだろう。どちらも力そのものだから。

でもそういう人は世の中に沢山いる。なぜ金が力なのかと言えば金で人を動かすことが出来るからで、それが実現するのは、金を恵んでくれる人間に必要以上にへりくだって追従する人がいるからに他ならない。金持ちに必要以上の憧憬の視線を送る人は金を持って同じように人を動かしたいという欲望を持っているから彼等に憧れるのだろう。生活の安定は誰しも求めるものだからそれを実現するためにはお金がいるけれど、必要以上に貯め込んで、それを大っぴらにして金満振りをひけらかす人物というものは許永中と性根の部分では同じだと思う。正業で儲けた金か違法な詐取で得た金かの違いだけで、心の底にある考え方は同じでとても卑しいと思う。貧乏人の僻みかも知れないがそう思う。