中国の大盗賊・完全版/高島俊男 著

中国の歴史において盗賊あがりの首領が皇帝に上り詰めたり、歴史に残る騒乱を起こしたりした事例を分かりやすく説いてくれる歴史の本。

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

 

 滅茶苦茶に面白かった。中国の歴史というものに特段興味があったわけでもなく読み始めたのだけど、期待を上回るというか想像以上の面白さだった。

漢 の時代、明の時代、清の時代、そして共産党の時代での盗賊の活躍、栄枯盛衰を表し、ついには毛沢東も盗賊の首領のようにしてのし上がったのだということが 書いてある。毛沢東とか共産主義に限らず偉いさんはとかく神格化されて美辞麗句ばかりになっていてとてもウザイが、この本を読むとそんなイメージは吹き飛 んでしまう。巷の本屋の毛沢東賛美関連の書籍の傍には本書を並べて置いておくべきではないか、とさえ思う。

盗賊の話だけでなく当時の中国の実情や政治体制のことなんかにも触れられていてとても興味深い。大小の国々が勃興したのも盗賊と無縁でないということが書かれている。

中国は盗賊が国を治める皇帝になるなんて野蛮、と思うかも知れないけど、日本だって豪族とか各地の武将とか武力、暴力装置をもってして国の主になって税金をとったり戦争して領土を広げたりしてヤクザの親分みたいなもんだから、あんまり変わらんよなとも思う。

中国の歴史研究というものが時の権力者(共産党)の意向によってコロコロ変わるので、一概には信用出来ませんな、という辛口の文言も随所に挟まれていてとても小気味良い。

平 易な文章で読みやすく、それでいてユーモア、皮肉も込められていてそこのところも面白い。中国の歴史を語るといえば、ちょっと大上段に構えて厳格な語り口 になりそうなもんだが、凄いけどアホですね、みたいな飄々とした語り口ですんなり読めてしまう。著者のこと全然知らないのだけど、どこか反権威主義的な姿 勢が垣間見えるのは気のせいだろうか。東大大学院卒なのに。中国研究の学問分野は徒弟制のようなところがあって自由がないと聞いたことがあるが、そういう のが影響しているのだろうか。

こんな面白い本を知らなかったなんて、今まで損してた。