味園ユニバース

 2015年、山下敦弘監督作
屋外ライブに突如乱入してきた男は記憶喪失の男だった。しかし歌は上手い。貸しスタジオの主の女は彼に店の手伝いをさせながらバンドに加入させようとするが、男は次第に記憶を取り戻していく。
大阪が舞台で、千日前の味園ユニバースでのライブを目的として物語は進んでいきます。主演は関ジャニ∞渋谷すばる

www.youtube.comおしい。こういう言い方すると偉そうだけど、おしい。街の雰囲気は良い味だしてるし、主演の渋谷すばるも良い顔してる。対する女優、二階堂ふみも良いし、その二人を取り囲むキャラクターたちも愛らしい。でも物語が・・・
物語が予定調和で何も新鮮味がないんです。次はこうなるんだろうな、と思う方に転がって行くので意外性ナッシング。
それと、なんでそこでばったり出会うの?なんでその場所に居合わせるの?なんでそれに気付いたの?という疑問符の連続で都合良すぎる。その場面で出会う必然というのが感じられない。よっぽど急拵えで脚本を仕上げたのでしょうか。なんか山下監督がいつも組んでる脚本家さんではないらしい。

山下敦弘監督の映画は、面白いんだけどもうひと押し何かがあって欲しいといつも思うんだけど、本作もそんな感じでした。おしい。

味園ユニバース 通常版 [DVD]

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Y/OUR MUSIC

2014年、タイ、ワラーラック・ヒランセータワット・エブリー/ディビッド・リーブ監督作
タイの様々な音楽家、モーラム(タイの民謡)の歌手、演奏家、楽器店主、インディーバンド、DJなどが音楽に向き合う姿勢を語るドキュメンタリー。

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現在開催中のアジアン・ミュージック・フェスティバルの中で行われたアジアの音楽映画の上映で観ました。
タイの音楽を職業とする人や市井の音楽家たちが自分達の音楽観を語る内容で、その語りがタイの景色と共に紹介されます。
何か事件があるわけでもないし、結論があるわけでもない。ただ彼らの音楽観が提示されるのみで、それに対する作者の見解があるわけでもない。
唯一あるとすればモーラムという音楽が田舎くさい、古びているというように思われていたけれどそれを支える人がいてそれを再発見しようとする人もいるという物語が滲んでいるくらい。
画面に映るタイの都市部や田園地帯の光景、市場や建設現場で働く人達の景色、それらが音楽と共に詩情あふれる画で彩られています。映し出される画がとても良いです。市場の雑踏や工房、演奏する人々、飾り気はないけれど今ある姿をそのまま映し出しているという感じがする。

上映後のトークと質疑で、音が良いということに関してどのような録音をしたのか?という質問に、編集で操作はしたけれど基本的に音の鳴る方へマイクを向けただけ、という監督の回答もなんだか素朴な感じがしました。

ドキュメンタリーといえど起承転結があったりするものですけど、本作は全くそのようなものがなくて、こういう映画もありなんだなあと思わせる映画でした。タイに行ってみたくなりました。

ギャラクシー・クエスト

1999年、米国、ディーン・パリソット監督
かつての人気テレビSFドラマの出演者たちはファン大会や催事に出演することで食いつないでいた。そこへテレビ番組を真実だと思い込んでいる異星人がやってきて俳優たちは星間戦争の仲裁者を依頼され、宇宙船に乗り込むことになる。

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最近ビデオを観てもなんだか途中でどうでもよくなって最後まで観てられなくて。こういう時は名作でも観ようということで本作を。

言わずと知れたスタートレックのパロディー満載の映画です。テレビシリーズ、宇宙船のデザイン、クルーの構成、そして熱狂的なファンをもパロっています。でもどれもこれも愛情に満ちているのですよね。笑い物にするんじゃなくて、そのおかしみを笑いにしている。誰も傷付かない笑いのお手本だと思います。そういう点がスタトレのファンからも好評だったと思うし、今でも何度でも観られる映画なんだと思う。
SFでコメディーだけれどSFXもちゃんと気を配ってちゃちにならずに作ってある。でも荒唐無稽さは最高に無茶苦茶。ラストのファン大会に宇宙船が突っ込んで俳優達が登場する場面は無茶苦茶を遥かに超えて感動的でさえある。劇場で観た時にはエンドロールで観客から拍手が沸き起こったのを覚えています。

本作は俳優の映画でもあります。SFや子供向けの番組は俳優でも軽くみられがちで、本作の中でもアラン・リックマンはかつては名舞台俳優だったのにと嘆くシーンがありますが、どんな仕事でも俳優という仕事をやり切るのだという主題が笑いの中に込められています。
先ごろ亡くなったアラン・リックマンはスタトレで云えばMr.スポックにあたるトカゲ頭の乗組員を演じています。死してなお永遠に観客を楽しませるという、俳優としては最高の仕事じゃないでしょうか。自分にとってはアラン・リックマンと云えばダイハードよりハリーポッターよりもこの映画です。

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少年メリケンサック

2009年、日本、宮藤官九郎監督

再結成した中年PUNKバンドのお話。

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コメディーですが、痛々しくて。最後まで観た自分を褒めてやりたい。

でもこういう映画をもっと沢山みるべきかも知れない。ちゃんとした映画が如何にちゃんとしてるかということがよく分かるから。

少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]

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麻雀放浪記

1984年、日本、和田誠監督作
戦後の混乱期、賭け事に魅せられた若き主人公は次第に麻雀賭博の世界にのめり込んでいく。

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麻雀あんまり分かってない人間なんですが、滅茶苦茶に面白い映画でした。

モノクロ映画です。84年の作品なので敢えてモノクロを選択している映画なのですが、終戦直後を描く為にそうしたのか、セットやロケで映したくないものを隠すためにそうしたのかは分からない。けれど、絶対これはモノクロで正解の映画だと思う。
博打の映画なので、緊迫感を描くことが必須条件だけれど、モノクロ映画のコントラストというものが画に大いに緊迫感を与えていると思う。賭け事のシーンだけでなく、夜は真に暗く、灯りのあるところだけに明りがあるという画が時代をきちんと伝えていて、それと共に全体にも緊張感を与えています。

これはセット撮影だと思うのですが、何シーンか屋外ロケのシーンもあって、あれはどこでどうやって撮っているのでしょうか。屋外に大規模なセットを組んだと思えないし。
セットもロケも戦後の煤けた感じがあって何一つ美しい場所は映らないけれど、美しくないものを美しくないままに表現しているものはとても好きです。

俳優陣の充実ぶりが素晴らしいです。若き真田広之鹿賀丈史大竹しのぶ加藤健一、名古屋章高品格加賀まりこ。中でも高品格が素晴らしいです。こんな悪くて賢くて老練な爺さんって今時いないんじゃないでしょうか。
どの登場人物もひと癖もふた癖もある博打打ちばかりなんですが、どいつもこいつも憎めない奴なんですよね。俳優の素晴らしさというのは、演技が上手いとかいうこともあるのだけど、その登場人物の過去みたいなことを想像させるところにもあるのではないでしょうかね。

こんな傑作を何で今まで観なかったのか不思議。未だ観てない傑作って幾らでもあるんだろうなー。

麻雀放浪記 角川映画 THE BEST [DVD]

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