FALL

2023年、米国、スコット・マン監督作

フリー・クライミング中に夫を亡くした女性は1年経っても悲しみから逃れられなかった。心配した友人は、600mの高さがある電波塔へ登り、それをSNSで発信する計画に彼女を誘う。
塔の最上部に登り、亡き夫の位牌をそこから撒いて目的を達成した二人だったが、降下しようとした途端、老朽化していた梯子は崩落して降りられなくなってしまう。スマートフォンも繋がらない。近くまで人が来ることもない。助けを呼べない状況で塔の上に取り残された二人はどうするのか。

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恐怖映画。その恐怖の源は高所からの転落。

高所恐怖症ではないのです。高層階の廊下やベランダから下を覗き込むだけで怖い、みたいな人ではなく、比較的大丈夫な方で、工事現場の足場や手がかり足がかりを辿って高いところに登ったりすることもあったので。
しかし高所の恐怖を描いたものは好きなのです。お化けや幽霊みたいなものは映画で見ても怖いと思わないけれど、高所からの転落を描いた映画は怖い。そして楽しく面白い。
シルベスター・スタローンの『クリフハンガー』という山岳アクションが記憶に強く残っているけれど、宮崎駿という人が描いた高所の恐怖が好きで、『長靴をはいた猫』や『未来少年コナン』、『ルパンⅢ世カリオストロの城』などの宮崎作品は高所でのアクションが沢山ある。そしてそのどれもが怖くて楽しい。ジブリ云々よりも宮崎駿はそういうアクションを描くのが凄い人だと思ってる。

この映画『FALL』は、ただただ高いところから転落すること、そこで孤立しているという恐怖を描いた映画でめちゃ面白かった。ずっと主人公の二人と一緒に塔の最頂部に取り残されたような気持ちになってしまって、危険な場面ではずっと手汗を感じていた。映像が危険な高所であること、そして老朽化した鉄塔の頼りなさを確実に描き出していて、素晴らしかったと思う。
SNSでバズる為に危険な行為に挑戦するといった今どきの風潮を皮肉る設定もあるけれど、何も難しいことは考えずに映画に身を任せていればハラハラドキドキさせてくれる映画で、真に体験する映画だったと思う。こんなにワンシチュエーションで楽しませてくれる映画もないのではないだろうか。