皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

2016年、イタリア、ガブリエーレ・マイネッティ監督作

警官に追われる男は、川に飛び込み難を逃れるが川底に沈んだドラム缶からおかしな液体に触れてしまう。
男は盗品の腕時計を知り合いに換金して貰うと、彼に麻薬の取引現場へ誘われる。取引は失敗し、男は工事現場の9階から墜落するものの生きているどころか怪我もない。男は不思議な力を得たことを知る。
死んだ知り合いの男の娘は鋼鉄ジーグのファンで、父親が帰って来ないことを男に尋ねるが彼は本当の事が言えず彼女の面倒をみるはめになる。
彼と彼女は、取引が失敗したことによって窮地に立たされたゴロツキ達に追われることになる。

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ヒーロー物の主人公は清く正しい人物であって欲しいと思う。大抵は超人的な力や武器を持っていて、間違った考え方を持っている人間にそんな力を行使して欲しくはないから。
しかし、そういう定型に対してダークヒーローという、正しくない人間が超人的な力を持つというパターンもあって、既にそれも定型化していると言えなくもない。『ヴェノム』なんかはそういうお話だったと思う。

この映画の主人公は、端的に言えばチンピラ。犯罪で生活している。力を持ったことを知ると彼が先ずやるのはATMの強奪で、碌なものではない。
知人の娘は日本製アニメ『鋼鉄ジーグ』の世界にとりつかれており、精神を病んでいるように見えるが、彼女が様々な暴力にさらされて生きてきたことが所々で明かされ、それが原因でないかと思わせられる。彼女によって、自分の欲望のために力を行使するよりジーグのように人の為、世界の為に行動するよう男は仕向けられる。

日本製アニメが海外で以外と人気があることは薄らと知っている。ヨーロッパで『アルプスの少女ハイジ』が広く知られていたり、アラブで永井豪の『グレンダイザー』が人気だったり、フランスでは『シティ・ハンター』が実写映画化されたりと枚挙に暇がない。『鋼鉄ジーグ』もそんな風にイタリアでは人気があったのだろう。

ヒーロー・アニメの登場人物は一切出てこないのに、犯罪映画+ヒーロー・アニメになっているという不思議な出来栄えの映画でした。