タリーと私の秘密の時間

2018年、米国、ジェイソン・ライトマン監督作

2人の子供を持つ女性は3人目の子供を身籠っていた。しかし幼い長男は学業に馴染めず学校から転校を勧められていた。子供が生まれてからも家事と育児に追われる彼女は、兄の勧めもあって夜だけのベビーシッターを頼むことにしたが、やってきたベビーシッターは若い女性で仕事を完璧にこなすのだった。

www.youtube.com

めちゃ良い映画だった。でも育児中の親を今現在やっている人、特に女性が観ればもっと共感する部分が多いのじゃないだろうか。
端的に言えば育児ノイローゼの話だが、そこにナイト・シッターという夜の子守を請け負う女性がやってくることで変化が訪れる。でも結末はちょっと違う。ネタバレになるから書かないけれど。

主役の母親を演じるのはシャーリーズ・セロン。映画の中で見られる彼女の体型から察するに普通の母親、奥さんを演じるために増量してこの役に臨んでいると思われる。超絶美人な女優さんだけれど、家事と育児で疲れた主婦にしか見えないところが凄い。
子守の女性を演じるのはマッケンジー・デイヴィス。『ターミネイター ニューフェイト』で未来から来た強化人間を演じていた女優さんだけれど、本作では不思議に現実感の乏しい役柄で、でもそれが魅力的でもあった。ただ、この不思議ちゃんな感じは物語の結末を知ると納得してしまうというオチでもあった。

家庭に疲れた中年女性が思う若さへの憧憬や懐古みたいな部分も描かれていて、男にもそのような感覚はあるものの、女性は出産という大きな節目があったりして男とは違う感覚があるだろう。

 男性監督がこんなに女性の心情に寄り添った映画を作れるのかと感心したが、監督のインタビューを見ると脚本のディアブロ・コーディ(女性)が起点になっていて、製作が決まったと話している。プロデューサーにはシャーリーズ・セロンも名を連ねていて女性が原動力になった映画とも言える。

育児で大変な母親が観れば身につまされる部分も多いと思われる映画だけれど、そうでない立場の人間もこういう映画を観て、ああ母親って大変なのだなあ、と思えるのが映画を観ることの意味だと思う。