昭和残狭伝

1965年、日本、佐伯清監督

終戦直後の浅草、闇市を仕切っていたのは神津組と新興の神誠会だったが、神誠会は神津組の縄張りに嫌がらせをするような悪どいやり方で勢力を伸ばしており、神津組の組長も銃で狙撃され亡くなった。折しも兵役から復員してきた寺島(高倉健)は先代組長の遺言で組をまとめることとなったが、遺言には「争い事をしてはならぬ」とも記されていた。
神誠会の様々な嫌がらせにも遺言を守って耐え続ける高倉健であったが、仲間を殺され建設中の市場を焼かれたことで客分(池部良)と共に神誠会へ殴り込みをかける。

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この後1972年まで11作続く『昭和残狭伝シリーズ』の1作目。
先日観た『日本侠客伝』とはまた雰囲気が違う。本作は終戦直後、『日本侠客伝』の方は明治後期から大正初期が舞台ということなので、時代設定が違うのだから当たり前だろうけれどなぜか本作の方が軽い感じがする。

この映画で描かれる神津組というのは、商品の仕入れを行って商人に提供し場所の治安も担当するというもので、ヤクザと言えないような感じもするが、縄張りのことを<庭場>と呼んでいるのでテキ屋の一種なのだろうと思われる。
対する神誠会の方は愚連隊も引き入れて敵対勢力への嫌がらせや強引な縄張りの拡張を暴力を背景に強行しているのでこちらの方がヤクザっぽい。
この辺りのヤクザの歴史というのもなんだか興味の湧くところだった。

耐えに耐えた高倉健が最後は日本刀1本で殴り込みに行くというのは、既に分かっていても胸のつかえが下りるというかスッとする展開でもある。客分(組に世話になっている旅のヤクザ)である池部良も立ち姿が格好良くて観ていて気持ち良い。

随分昔の映画だけれど名作とされる映画には今見てもそれなりに納得させる部分があるのだなあ、みたいなことを思って感心したりしたのでした。